よし

映画ドラえもん のび太の月面探査記のよしのレビュー・感想・評価

4.7
僕の子ども時代のドラえもんの記憶。ビデオで観た『のび太と夢幻三剣士』。
夢の中でのび太はノビタニアンという剣士になって焚き火で焼いたマンガ肉を食べたり、悪いやつを倒すために夢と現実の世界をひっくり返したりしていた。
おぼろげな記憶。それだけがドラえもんとの思い出だと思う。
ドラえもんと共に育った子どもではなかった。

そんな僕でも知ってるような素晴らしいひみつ道具たちが章タイトルを飾り物語を輝かせていた『凍りのくじら』を20歳の頃に読み、僕はもう辻村深月に夢中だった。好きな人が好きだという理由でドラえもんのことも愛しく思った。

あの、記憶にわずか残る古ぼけた思い出の映像からどれだけの人たちが時間と気持ちを繋げてこうして公開された月面探査記だろう。作品の外の物語が壮大すぎる。
そこに僕を導いてくれた旗印みたいな「脚本家 辻村深月」の文字。

先行ノベライズですでに読んだ展開をなぞっていくだけ、じゃなかった。映像と音がずっとわくわくさせてくれた。アニメの力を改めて思い知る。
当たり前だけどキャラクターがめちゃめちゃ立ってるいつもの面々の愉快なやりとり。それぞれの揺るぎない役割が物語を魅力的に光らせた。もちろん未来のひみつ道具もわくわくさせるものばかり。偉大な先人が残したものをちゃんと使いこなす脚本だった。
みんなが笑顔になれるたくさんのシーン。
そっと心に届けられる素晴らしい言葉。

「その為に準備してた筈なんだ」
「のび太のおやつと一緒だね」
よし

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