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映画ドラえもん のび太の月面探査記のBellのレビュー・感想・評価

4.5
予告編から、とても面白そうで、期待していました。
脚本が、作家の辻村深月さんとのことで、ワクワクしてて。ドラちゃん映画では、久々に前売り券まで買って楽しみにしていたのです。

111分とアニメにしては少し長めかな?と思いましたが、大人も充分に楽しめる、深いメッセージ性のある、壮大なファンタジーでした。

月の裏側にウサギが住んでいると信じていたために、皆にバカにされたのび太が、ドラえもんの「異説クラブメンバーズバッジ」の力を借りて、月の裏側にウサギ王国を創る・・・というところから。物語は始まります。

「異説クラブメンバーズバッジ」、原作にもあるひみつ道具ですね。
原作では、月ではなく、地底に地底人の国を創るお話でしたよね。

今回の映画では、その舞台を月に変え、更に、壮大なファンタジーとして膨らませたストーリーとなっていました。

そして。
のび太が創ったウサギ王国の話と並行して、ルカという謎の転校生の少年が、のび太に興味を持ち、接触してきます。
そのルカこそ、本当に月の裏側に隠れ住んでいる人種で。
1000年前に、発展し過ぎた科学や兵器によって、光と緑を失った惑星・カグヤ星から逃げて来たエスパー達のひとりなのですよね。
その類稀れな超能力によって、1000年以上もの歳月を生き続けているものの、未だに、その力を利用しようとするカグヤ星の軍部から狙われ続けている・・・という。

こうして、のび太達は、カグヤ星の魔の手からルカ達を守ろうと立ち上がるのです。

キッカケは、のび太が信じていた「月の裏側にウサギが居る」という小さな出来事から。
ドラえもんの道具の力で、ウサギ王国を創り、そしたら、本当に、月の裏側には人が住んでいた!・・・と、日常生活から、どんどん、不思議が広がっていく過程も見ていてワクワクしました。

また、月に隠れ住んでいたルカの仲間の少女ルナが、かぐや姫伝説の張本人だった・・・というのも、なんだか、夢のある月の伝説っぽくて好きでした。

そして。
そんなルカ達を狙い、それを阻もうとかるのび太達の命も狙ってくるカグヤ星の軍隊達。

カグヤ星の1000年前の歴史が、どこか、地球もこの先、私達の選択次第では、こうなってしまうのではないか?という恐怖感がありました。
また、カグヤ星を支配し、圧政を強いていたラスボスのディアボロが、カグヤ星人自身が創りだした人工知能だった・・・というのも。
何かとAIが話題になっている昨今を反映しているようで。

人と科学とは?と考えさせられました。

人がより便利に暮らせるように~という想いで、発展し続けていた科学が、もしかしたら、人間の首を絞めているのではないか? 地球上に住んでいる全ての生物や、地球そのものを滅ぼすのではないか?
そういう疑問も生まれます。

でもでも。

戦いの中でドラえもんが叫んだ、
「想像力は未来だ! 人への思いやりだ! 想像力を諦めた時に破壊が生まれるんだ!」
という言葉に、救われた気がしました。
胸にグッと来る言葉です。

カグヤ星の支配者・ディアボロが放った言葉も、決して間違いではないかもしれない。

私達の選択ひとつで、地球も、カグヤ星のように、光と緑を失うこともあるかもしれない。

でも、ドラえもんの言うように、想像力や思いやりがある限りは、ディアボロの言うようにはならないのではないかなぁと。
そう信じたいです。

1000年も前に光と緑を失ったカグヤ星が再び蘇ったのも、ルカ達の両親の愛や、のび太達の友情や、未来を信じる気持ちなど、様々な思いやりの力のお蔭だと思いました。


ルカ達を救う戦いに挑む、決戦前夜。
のび太、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫が、それぞれの決意を胸に、そっと家を抜け出してくるシーンも胸に来ました。

彼等には、家があり、自分達を愛してくれる家族が居て、このままここで安全に暮らしていくことだって出来るのに・・・それでも、その家族を置いてでも、ルカ達を救う危険な戦いに行くという決意。友情。

果たして、今の自分なら、そこまで出来るかなぁと考え、そんな熱い想いを持つのび太達が、彼らに想われるルカ達が、羨ましくなりました。


そうそう。

この作品、ストーリーはもちろんのこと、視覚的にも、いろいろ楽しめましたよ。

月のウサギ王国も、また、カグヤ星も、とても和テイストで。

特に、カグヤ星は、科学が凄く発展していながらも、建物や兵器などが、平安時代っぽいデザインなのです! 平安時代の衣装を着た兵士ロボットが、ホラーっぽくもあって、怖かったです。
でも、こういうの好き~。

ウサギ王国は、ファンシーな和テイストという感じで可愛らしかったですし。

視覚的に、とても楽しかったです。


月という、私達に身近な存在と、それに纏わる言い伝えや伝説。
そんな、おとぎ話のような、それでいて、壮大なSFで、大人も子供も楽しめる映画でした。
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