KANA

ロリータのKANAのレビュー・感想・評価

ロリータ(1997年製作の映画)
3.9

再鑑賞、初レビュー。

私は本作を先に観てからキューブリック版を観た。
あんなに大好きなキューブリックなのに、『ロリータ』に関してはこのエイドリアン・ライン版のほうが断然好き。

ドロレスに出会った瞬間たちまち一目惚れし、翻弄され、支配欲・独占欲に苛まれて崩れてゆく男、ハンバートをジェレミー・アイアンズが絶妙な悲壮感で演じてて秀逸。
その哀れさは同情を誘うほど。

そして肝心の“ロリータ”役のドミニク・スウェインがとにかくいい!
キューブリック版とは比べ物にならないほどの奔放さ。
大のオトナを挑発&誘惑する「幼女」と「妖女」のアンビバレンス。
一つひとつの仕草やまなざしが本当にコケティッシュで魅力的。

咥えるバナナや頬張るキャンディーのメタファー、
年齢的にはニンフェットであることを象徴する歯列矯正のブレース、クリームソーダ…
モロな描写より、このインモラルな危うさのほうがエッチ。

一番印象的なのは冒頭、キラキラした庭で雑誌を見ながら横たわっているドロレスのクローズアップシーン。
すでにここで女の私でもKO。
なんて美しい撮り方なんだ…!

変態的な性癖?それともどこまでも一途なおじさんの純愛?
もちろん非倫理的だし、非現実的なメロドラマと言っちゃえば身も蓋もないけど、
モリコーネのメランコリックな音楽や50年代ニューハンプシャーのレトロな風景も相まって右脳は満足。

ウラジミール・ナボコフが生んだ「ロリータ」という言葉がまず魅惑的、、
ねっとりと舌にまとわりついて離れないその響きは、甘くて危険なエロティシズムのイメージで…。
KANA

KANA