アキラナウェイ

蜜蜂と遠雷のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.7
史上初の直木賞と本屋大賞のダブル受賞を果たした恩田陸の同名小説を映画化。

ピアノの音色が好き。
ピアノが弾ける人を尊敬する。

ピアノであれ、何であれ、天才と称される人達が、どんな風に物事を捉え、最高のパフォーマンスを魅せるのかに、興味がある。

世界最高峰のコンクールへの登竜門として注目を集める芳ヶ江国際ピアノコンクール。13歳の時に母親を亡くして以来、長らく表舞台から遠ざかっていた元天才少女、亜夜をはじめ、コンクールの予選に集った4人の若者達のそれぞれの戦いが始まる—— 。

素朴な音を紡ぐ、音楽大学出身ではない高島明石(松坂桃李)。他のピアノ奏者より歳も上で、妻子もいる庶民派。天才肌というより、努力の人。

正統派で真摯に音楽と向き合うマサル(森崎ウィン)。フランスから渡米し、ジュリアード音楽院に在学中。亜夜とは以前より面識がある。

音楽大学出身ですらなく、ピアノの大家ホフマンに見出された天才児、風間塵(鈴鹿央士)。気分を高揚させ、頬を赤らめ、まるで本能の赴くままにピアノの鍵盤を爪弾く。

かつての苦しみを乗り越え、再びピアノと向き合う事を決めた栄伝亜夜(松岡茉優)。葛藤を抱えながら、コンクールの中で進化を続け、軽やかな音色を紡ぐ。

それぞれのキャラクターと、音楽への向き合い方には明確な違いがあり、それぞれのプレイスタイルに目と耳を預け、音と演技を堪能する豊潤な時間。

雨粒の描き方が美しい。

1時間35分を過ぎた辺りの亜夜が流す涙。感情が膨張して、弾けた末に流れた涙。その表現力には恐れ入った。

困難から逃げずに向き合った亜夜が到達した境地。

世界が鳴っている。
世界が祝福している。
世界はいつでも音楽に溢れている。

正直、申し訳ないがブルゾンちえみとか要らない。余分なキャストは排してもらって構わない程、4人にもっとフォーカスして欲しかった。

芸人の方で演技が上手な方も多いし、キャスティング上、その方が必然・必要なら構わない。ただ、本作の彼女の役は彼女でないといけない理由はない。こういうの、邦画の悪習だと思う。