このレビューはネタバレを含みます
Filmarks試写で観ました。そして、最初に断っておくと原作未読です。
蜜蜂と遠雷、試写に当たらなかったら映画館で観ることはなかった映画になってしまっていたと思う。フライヤーの印象が、あまりにも典型的な、感動させようと作られた、邦画のそれだったから。
そんなイメージは裏切られ、だいぶ好きな雰囲気の作品でした。こんなに語らない、孤独だけど暖かい作品だとは思わなかった。
これ、もっとそれぞれの孤独が際立つキービジュアルがあったら観に行っただろうな。松岡茉優がステージの上でひとりスポットを浴びてるとか。4人がお互いに良い影響を与えながら成長していくってのと同じくらい、天才たちの孤独が美しい作品なので。
そしてとても誠実な作品だと思った。原作がこんなに大きなタイトルなのに、ネームバリューに頼らない役者を起用して、誤魔化さず音楽に向き合って。森崎ウィン・福島リラとか、もはやキャスティングがハリウッドじゃん。ピアノの演奏シーンも、思ってたよりずっと手を映してた。
松岡茉優さんは裏切らない。繊細な感情を表現できる女優として、製作陣の満場一致で松岡茉優に決まったらしい。柔らかい人の中の孤独を見せられる松岡茉優が本当に好き。シリアスなシーンでも空気は重たくなりすぎないけど、もっと奥に闇を感じさせるような。
松坂桃李さんは、今まで良さをなんで知らなかったんだろうって…なんか苦手だったというか、見たい作品に出てなかったんですよ。曖昧な表情、すごくよかったなあ……すごく普通の人に見えた。配役が松坂桃李はイケメンすぎるんじゃないか? って話もあったらしいけど、本当に普通の人に見えたので。
森崎ウィンくん、松岡さんとの掛け合いが尊い。亜夜とマサルが2人で会話してて、顔が綻ぶところがすき。尊い。
鈴鹿央士くん、すごい、監督、起用してくれてありがとう…亜夜と連弾するシーン、この映画で一番好きかもしれない。絵画かな?って。
見ながら、ピアノやってた時のことを思い出してたけど私は好きになれなかったなあと思った。「世界でひとりぼっちになってもピアノの前に座ると思う」なんて言ってみたかったね。ちょっと泣いちゃった。
2時間に収めるときに色々削ったと監督が話していたけど、3時間ver. とかが観たい作品。今はやっぱり少しストーリーに歪さが出てしまっているとは思う。ちょっと明石の距離がわからないなと思っていたらキャラクターの役割が原作と少し変わってると聞いて納得したり。
しかしストーリーの展開とキャラクター数の話は非常に勉強になりました。最近ジャンプの編集さんのキャラクター論なんか読んで気になっていたところなので。
とまあ、原作ファンは不満に思う部分もあるのかもしれませんが。説得力のある俳優陣の演技は絶対観て損はしないので。これが長編2本目の監督なんて信じられない!くらいのクオリティ。