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蜜蜂と遠雷のknjmytnのレビュー・感想・評価

蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)
3.8
“蜜蜂と遠雷“という抽象的な題名に込められた物語の本質の美しさが相変わらずすごい。

風間塵と栄伝亜夜の2人だけの、誰のためでもない才能同士が溶け合った夜の連弾。

毎日の血の滲むような鍛錬を表現し、超絶技巧を駆使したマサル。

穏やかな日々の感情や思い出を表現した高島明石。

音楽という蜂蜜のように甘い、夢のような才能を堪能しながら、それを生み出している演奏技術はまるで遠雷への畏怖と似ている。
一般聴衆者としての第三者的感覚。

一方でその表現世界で闘う当事者たち。
どれだけ時間をかけて努力しても到達できない、“才能“。抗えない自然のような残酷さ。まさにこれから起こる暴風雨を予知する遠雷に感じる不穏さ。

才能がない表現者は絶対的な才能のために、次の才能を持つ女王を生み出すための餌を運び続ける働きバチみたいなものなのか。

恐ろしい自然災害の雷には畑に窒素酸化物を運び、豊かさをもたらす面もある。
そして蜜蜂という存在も植物の交配に、蜂のコミュニティにとっては食物を運び、人間にとっては蜂蜜をもたらしてくれる。
ひとつの結果以外に様々な恩恵が生み出され、あらゆる世界に豊かな恵みをもたらしてくれる。

才能が鮮烈に輝く音楽世界では、蜜蜂と遠雷のような存在が一般聴衆のみならず、その表現世界で懸命に競っている存在にとっても重要であることがよくわかる映画だった。
そしてコンクールとしての結果も。

小説もやっぱり読みたいな。
ちょっと“ピアノの森“と“四月は君の嘘“のいいとこどりみたいな感覚を持ったけど…
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