叡福寺清子

ちいさな独裁者の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

ちいさな独裁者(2017年製作の映画)
3.5
本作視聴中にまず頭に浮かんだのが来海えりかの「知ってる? ファッションにはね、人の心を華やかにする魔法があるんだよ。性格変えるのって難しいけどさ、服変えるだけで、なんか違う自分になった気がするじゃん? 単純だけど、でもそれでいいと思うんだよね」って言葉でした.えっ?来海えりかって誰やねんですって?キュアマリンじゃないですか.社会人としての常識でそ.プリキュア観てないんですか.大人として恥ずかしくないんですか,29日からシリーズ18作目トロピカル〜ジュ!プリキュアがちょうど開始されますから,必ず観るようにして下さい.呼延灼との約束ですよ.
本作は.ただの脱走兵だったのに,大尉の服を着用しただけでなんか違う自分になった気がしたヴィリー・ヘロルトの物語.と同時に制服という属性を盲信した周囲が,ヘロルトの暴走に同調し,集団ヒステリーといえる喧騒の元大虐殺を行った物語でもあります.物語後半何度か挿入される宴会の狂騒に,ソドムを連想したのは私だけではないでしょう.その喧騒,狂騒,狂乱には,それだけではなく全編を通してヘロルトの物語には色がほとんどありませんでした.虚飾で彩られたヘロルトの物語に必要以上の色は必要ないじゃんか,という皮肉とも捉えることができるかもしれません.
そのヘロルトが人骨の森を抜けるシーンがあります.が,ヘロルトの目には夥しい数の人骨が目に入りません.自身の罪は全て制服が行った事とでも言うかのように.であれば,その制服を脱がされたヘロルトの人生がその後惨めになることは自明のはずだったのですが,「自軍に損傷与えてないし」で完結させちゃう軍のありようにムヒョーとなったわけであります.戦争コワイネ.