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ちいさな独裁者のトレバーのレビュー・感想・評価

ちいさな独裁者(2017年製作の映画)
4.5
この所良作ラッシュで、観に行くのも
こちらに書き記しておくのも全然
追いつかないんですけど、少し前に観たけど
これは書いておかなければという作品が
いくつかありまして、こちらもその一本です。

こんな事が本当にあったのか、、、と
ちょっと唖然とする史実を元にした、
でも実は今だからこそ作られるべき映画でした。

ひと言で言えば、勝ち馬に乗る心理の恐ろしさです。
(追記:この映画の場合ドイツが敗戦の色濃い時の出来事なので、勝ち馬では無いですが
意味合いとしてはこの言葉が妥当かなと)

若い脱走兵が、1着のナチス親衛隊の制服を
手に入れる事で傍若無人の限りを尽くしていきます。
小隊からはぐれた兵士や、燻っていた兵士達も
ニセ親衛隊員について行きつつ、その男のズボンの丈の長さを見て見ないふりをします。
(親衛隊員の制服はオーダーメイドでしょう、、)
居場所がなかった兵士達にとって、本物か
どうかはどうでもいいのです。

ヒトラー。
その名前を出すだけで力を手にしたような気持ちになる。
立ち寄る逃亡兵収容所の将校達も、あっさりと
親衛隊員御一行を受け入れて、おぞましい
残虐な行為に手を貸してしまいます。
囚人に穴を掘らせ、穴の前に並ばせて
対空砲で処刑。夜には穴に囚人を突き落とし
手榴弾を投げ入れて処刑。
勿論その行為に意味などありません。
(撮影時、キャストの方達は精神的に参ってしまったそうです、、、)
もはや敗戦間近と誰しもが勘付いている状況に
おいて、暴走するしかなかったのでしょうか。

ナチスが行なった断じて許されない行為も
このニセ親衛隊員が起こした蛮行も、
根っこは同じです。

集団心理の恐ろしさ。
責任を背負わずに、凶行に及べれるのです。
そう、ヒトラーの名の下で。

これは、現代社会にも当てはまります。
民衆が、疑問に思わずに(分からないのか、
もはやそんな事はどうでもいいのか)
権力におもねり、差別やヘイトが横行する。
弱者、マイノリティを無いものとしようとする。
世界も、アメリカも、日本も。
だって、どう考えてもトランプはヤバイでしょう。
そして、そんなトランプをノーベル平和賞に
推薦したどこぞの総理も、、、。
その総理側につくことで勝ち馬に乗った
気になっている人々は、親衛隊の制服を
手に入れてしまった、21歳で逮捕され
ギロチンに処されたこの男と似たようなものです。
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