部分的にですが、本作を観て「痛快」だと感じてしまった僕は頭がおかしいのかもしれません。
若いドイツ兵が大尉と身分を偽り、同胞であるドイツ兵たちを皆殺しにする話ですから。
しかも、惨めったらしい日々を過ごしていた脱走兵が権力を手にした途端に、自己保身のために自分と同じ立場であった脱走兵を殺しまくるわけです。本当に胸糞悪い話ですよ。
であるにも関わらず、主人公の嘘が面白いほど通用してしまい、権力を掌握していく過程がどこか痛快であるとうのは本作の危険な部分であり、同時に狙いかと思います。
と言うのも、本作はどこかピカレスクロマン(ピカレスク小説)っぽいのです。
ピカレスクロマンとは社会的弱者である小悪党が(不条理な)社会の中でのし上がっていく物語のことです。映画で言うと『バリー・リンドン』『スカーフェイス』『ジョーカー』などがその系統ですね。
主人公のやることは人の道に反する立派な犯罪なのですが、弱者が富や権力を持つ者を倒していく行為が潜在的な共感を呼びやすいのが特徴でしょーか。
どこか痛快であるというのは、このピカレスクロマンのフォーマットが用いられている効果かと。
で、本作はそんな悪党活躍物語をナチスにおけるサクセスストーリーとして描いているという恐れ知らずな一本です。