うーん…欲望系エンタメとして観れば展開も早くて映像も豪華で面白かったけど…面白かったけど…。ミステリーの要である伏線から来る謎解きのスリルと快感は犠牲になっているというか、最終的に投げるように放棄されてるような…。
瀟洒な洋館で起こった大富豪老人の不可解な「自殺」と、彼の莫大な遺産に群がるアリバイある親族たちというアガサ・クリスティー系正統派ミステリーのベースによって、スムーズに鑑賞者を引き込みながら、実は日本人には古畑任三郎でお馴染みな犯人の嘘と綻びを余裕を持って眺めるものなのか…いや、積み上げたそれらを全て嘲笑う大ドンデン返しがきた!おお…すごい…と期待させたと思いきや。
…最後は決定的な証拠の一切ない中での突発的な推理から力技で無理やり解決に持っていくという、ミステリーの「緻密さ」を捨て去っている点はどうにも…。
探偵も刑事も基本的に活躍しないし…。意味あったのかな、彼ら。
まあ、それまで結局何も積み重ねてなかった探偵が、ようやく最後にとある事に気づいて強引にしゃしゃり出て解決に進むから、探偵の役割はあったか…。
ミステリーとしては地盤が弱く、終盤の失速は残念ですが、序・中盤は展開が速くて色彩的にも豊かな楽しいエンタメとして割り切って観れば、良い作品だと思います。