ベルリンの壁が建設される前の東ドイツはなかなか想像もできないので、当時の国の空気感がわかる貴重な映画だった。
エリート高校生たちが、ソ連の軍事介入によるハンガリーの民衆蜂起の犠牲者に黙とうをささげたことが、体制への反逆行為とみなされ、追い詰められていく。
息子が東ドイツを脱出すると気づきながら知らないふりをする父親の姿には涙を流さずにいられない。
社会主義国特有の冷たい空気が流れるなか、決して友達を裏切らない絆や、体制への不信からくる大きな連帯感が温かい風を逆流させていく。
けれど国家の冷たい風に逆らえるわけもなく、温かい風はあるべき場所へと流れていく。
東ドイツを題材にした映画では、ベルリンの壁崩壊後の「グッバイ・レーニン」、ベルリンの壁崩壊前の「善き人のためのソナタ」が名作として名高く、私も好きな作品。
これらとともに、ベルリンの壁建設前の今作は、東ドイツものの良作として記憶に刻みたいと思う。
原題の直訳は「静かな教室」。
少し商業的すぎる邦題な気がする。
実話の重みを感じる非常に良質な映画だった。