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ラ・ヨローナ~泣く女~のdm10foreverのレビュー・感想・評価

ラ・ヨローナ~泣く女~(2019年製作の映画)
3.9
【都市伝説】

メキシコに伝わる「ラ・ヨローナ(泣く女)」という都市伝説をベースにしたオカルトホラー。
なかなか良くできています。キチンとホラーとしてのセオリーも守られているし、じわじわと迫ってくる感じなんかも王道ホラーという感じだったと思います。

都市伝説と言えば、日本では「口裂け女」や「トイレの花子さん」「100kmババア」なんかも入るのかな?(え?100kmババア知らない?車で逃げても100kmで追いかけてくるって奴(笑))
で、今作に出てくる「ラ・ヨローナ」に関しても、世界中で数ある「言う事聞かない子供を諭す時の常套句」として語られる「怖い話」の類として実際に語り継がれている悲しい幽霊。

~~その昔、メキシコの貧しい村にマリアという女性が住んでいました。ある日そこを偶然通りかかった町の御曹司がマリアに一目惚れをしてしまい、マリアもそれを受け入れて周囲の反対を押し切って結婚し、二人の男の子を授かります。
しかし、幸せは長くは続かず、夫は別の若い女性と不倫関係になってしまいます。
怒り狂ったマリアは、彼の一番大切なもの「子供」を川に沈めて殺してしまいます。
しかし、我に返ったマリアは自分の過ちの大きさに耐え切れず自らも自殺します。
ところがマリアは神様から死ぬことを許されず、永遠にその川で泣きながら子供を捜しているのです・・・。

と、まあ言い伝えはこんな感じ。

先にも書きましたが、怖がらせ方なんかもしっかり作ってありますし、何より好感が持てたのは、必要以上に「スプラッタ」や「グロ」に舵を切らなかったこと。
最近のホラーは「血が吹き出る」「首が吹っ飛ぶ」=「怖い」と勘違いしてるのかなと思うくらいに『映像』で見せたがる。
勿論、CG技術の進歩なんかも頭にはあるから「ショッキング映像」もありつつってのを期待してないわけではない。でもそれをクライマックスにしてしまうと、見た瞬間は「わっ!」って思うけど、後々尾を引くような怖さは残らない。
今作に関して言えば、実は人が直接的に殺されるシーンは殆どない。ホラーには珍しいくらい死人は少ない。
だから怖い。終わらない恐怖が延々と追いかけ続けてくるから。

ただ、そうは言ってもそこは「ハリウッド映画」。ちゃんとセオリー通りの「怖い」映像もキチンと散りばめられているので、いい意味で「万人受けするホラー」なのかもしれない。



にしても・・・。
ひとつの「都市伝説」的な話にたった一つのエッセンスを加えるだけで、こんなに奥行きを感じるものなんだね。
そもそも「都市伝説」「幽霊」の類なんて所詮は現実じゃないんでしょ?という話の流れから・・・あ~そ~なんだ。いやいや、妙な説得力。
もはやチャッキーに並ぶ恐怖のアイコン。一気に話の深みと言うか奥行きが増していきました。思えばペレス神父が出てきた時点で「え?繋がってるの?」と他の人気シリーズが頭に浮かぶのですが、これがマルチユニバースのように「世界観」というものでリンクすると考えたら・・・なんと恐ろしい!
ジェームズ・ワンの仕掛けなのかもしれないけど、こういうの嫌いじゃない(笑)


でね、物語の中で「ラ・ヨローナ」については、言い伝えの部分こそ神父の口から話されたものの、実はその恐怖の根源というか「何故怖い」「どう怖い」の部分があまり深くは語られてはいなかった。
ここはこの映画をどう見るか?という部分も影響しているだろうけど、個人的にはとても上手く感じた。そもそもメキシコの都市伝説なのに今作の舞台はロサンゼルス。普通ならピンとこなさそうなところだけど、「ラ・ヨローナ」についてその土地の慣習的なものや時代的な背景をあまり盛りすぎず「子を失った母の言い表わせない喪失感や絶望感」が大前提にあってそれは全世界共通の「親心」。
だからこそ、生きているパトリシアも「ラ・ヨローナ」となりうるし、アンナ自身にもその気質はある。それは「人の親」である以上、切っても切り離せない感情。
こういう都市伝説が時代を超えて語り継がれていくのって、むしろそういう人間的な部分が見えたとき、物語性に魅力が生まれてくるからなんだろうな・・・と感じた。
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