maverick

王宮の夜鬼のmaverickのレビュー・感想・評価

王宮の夜鬼(2018年製作の映画)
4.1
2018年の韓国映画。ヒョンビンとチャン・ドンゴンの2大スター共演作。


朝鮮王朝時代を舞台にしたまさかのゾンビもの。斬新な発想が面白い。もっと色物な作品かと思ったが、これが時代劇としてもしっかり作られている。清に服従を余儀なくされた時代の朝鮮の話であり、宮廷での権力争いや民の苦しみを描くドラマとして申し分ない出来。そこに違和感なく「ゾンビ」の要素を盛り込んであり、実に見事な融合だなと感じた。ゾンビ=夜鬼という設定も面白い。ワイヤーアクションや、殺陣を駆使したアクションシーンも迫力がある。想像以上に良作だ。

主演のヒョンビンがかっこいい。『王の涙 -イ・サンの決断-』と同様、本作でも王族を演じる。だが今回は出来の悪い王子を演じており、そのギャップが何とも新鮮で魅力的だ。剣の腕はあるが人間性が問題。でもそれが憎めないチャーミングなキャラクターだ。王の器に相応しくない人間であるが、この状況の中で自然とそれが備わってゆくのが良い。やっぱりヒョンビンは理想の男を演じさせたらピカイチだ。

チャン・ドンゴンの存在感も半端ない。ヒョンビンとはまた違った魅力に溢れる俳優である。最後の方の迫真の演技は凄まじかった。韓流四天王の風格は伊達じゃない。2022年現在、本作を最後に映画出演が無いのが何とも残念だな。

主人公の相棒役のチョン・マンシクも良かった。『ミッション:ポッシブル』のイ・ソンビン、『インサイダーズ/内部者たち』のチョ・ウジンなども目を引く。設定が突拍子なくても、役者が真実味のある芝居をするからリアリティが生まれる。作中で何度も胸が熱くなるドラマがあった。ゾンビ(夜鬼)役のエキストラでさえも迫真の演技なのだから感心してしまうよ。

アクションシーンは美しくダイナミック。ヒョンビンが大勢を相手に斬りまくる場面は、さながらアクションゲームのような軽快さもあった。エキストラの数も半端なく、スケールの大きさによるエンタメ要素も抜群だった。夜鬼の動きもそれぞれ異なり、アクションの見せ方に工夫がされている。監督のこだわりをひしひしと感じた。


ゾンビ+王朝という異色作。でも中身はしっかりとした人間ドラマで構成されていた。ゾンビものだからと単なるB級スプラッター映画にしないのが韓国映画の感心するところ。ホラー映画としては薄味なので、そこを期待するとがっかりするかもしれない。ビビりな自分にはありがたかった(笑)。
maverick

maverick