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象は静かに座っているのyoshikoのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.4
見てからかなり時間がたってしまったのだけれど、映像の部分部分が記憶に刻み付けられてしまっていて、やはり書かずにはおられない。中国南部の重工業の街で、4人の主人公の一日が描かれる。カメラは被写界深度を極端に浅くして、主人公以外の人物はほとんど亡霊のようにしかたち現れない。エピソードは時に連鎖し、時に互いに何のかかわりもないように発生し、希望があるのかないのかわからないような深夜の旅へと収斂していく。「パラサイト」がそうだったように、これはこの社会のどうしようもなさのなかでもがく人たちの「希望」の物語だ。でも「希望」は彼らにとってはカギカッコ付きでしか存在しない。カギカッコでくくられ続ける中から脱出しようとする先に、カギカッコのない希望はあるのだろうか。

女性2人(主人公の1人の高校生と、主人公の1人が付き合っている相手である女性)のまなざしの強さと深さが印象的だった。自分の人生を選び取ろうとする強さが女性たちに託されている。

監督が自ら死を選んだのは本当に残念だ。カギカッコは決してはずすことはできないと思い定めてしまったのだろうか。
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