ベンジャミンサムナー

象は静かに座っているのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
3.0
 「人は行ける、どこにでもな。そして分かる。どこも同じだと。その繰り返しだ。だから行く前に自分まで騙すんだ。今度こそは違うと…。
 お前はまだ期待してる。一番いい方法は、ここにいて向こう側をみることだ。そこがより良い場所だと思え。だが行くな。行かないからここで生きることを学ぶ」

 個人的には、一つ一つのカットが執拗に長いことよりも、流石にストーリー上の余白の部分が多過ぎてノリ切れなかった。
 いや、余白が多くて理解できない部分があるからこそ(監督の意図とは別に)長尺なのも苦痛になってくると言ったほうが正しいか。

 まず、ブーとリン(ついでに彼女と関係性を持っている副主任)を追い込む引き金となる動画の存在だが、どういう経緯で流出したのかが分からない。「カイの小便してる映像」というのも謎。
 ブーがジンに自分のキュー(ビリヤードの棒)を渡すことで、本作の内容がビリヤードの玉突きのように悲劇の連鎖反応が起きる様を象徴しているのだろうが、その起爆剤となる"手玉"の要素はしっかり描写してほしいところ。
 あと、ブーの祖母が急にベッドで亡くなってるのも分からない。っていうか祖母の下りは必要だろうか?

 『サウルの息子』的語り口と4時間弱もの長尺は食い合わせが悪いと思う。(もしくは演出の塩梅か)
 フー・ボー監督はプロデューサーに本作の尺を削れと言われた事を苦に自ら命を断ったと推測されているが、もし監督が4時間かけて人物に寄り添う事が本作の死守すべき点と考えてたのなら、代わりに状況やその原因の描写はもうちょっと掘り下げる必要があったと思う。
 
 終盤の、屋上で日が落ちて辺りが徐々に暗くなっていく様子をワンカットで捉えたシーンは長回しならではの美しさがあってよかった。