うみぼうず

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者のうみぼうずのレビュー・感想・評価

4.0
マルタで電動スクーターに乗ってた人は本当にお気の毒である。

恐竜がただの舞台装置になっていて とても残念。
僕らが見たいのは、恐竜が自然の中で雄大に生きる姿であり、人間達が如何にそれらの脅威に立ち向かい逃げ惑うか、だとずっと思っている。古代のDNAから絶滅した恐竜たちを甦らせる神をも恐れぬ行為が招く、"自然"との邂逅。恐竜にはそうしたロマンが詰まっている。同じ古代のDNAとはいえ、イナゴを見たいわけじゃないんだ。
このシリーズは大好きで、特に一作目は小学生の時に観て忘れられない作品。だからこそ細かな点がとても気になってしまう。

これだけ恐竜が普通にいる世の中、各国での恐竜対策や恐竜に対しての法律など細かな点を見れればより現実的に受け止められただろうに、恐竜の立ち位置が中途半端でモヤっとする。

またオープニングはもっと市街地で追いかけっこすれば恐竜が世に出ている事実を伝えられたのではないか。せっかくの状況をナレーションだけで片付けるのはもったいない。違法なルートでしか海を越えていない、というわけではないよね…?
札幌の市街地にヒグマが出た、の数十倍危険で、日常に溶け込む恐竜たちをもっと見たかった。

そんな世の中なら恐竜対策グッズとか売れそう。普通のスタンガンでなく射出式だったり装着式だったり。麻酔銃とかネット銃とか、閃光弾など傷付けない武器も普及するのでは。
恐竜絶滅派のデモもありそう。絶滅を先導している政治家が恐竜の親子の絆を見て改心する…彼らも生きているんだ…的な話もありそう。
…などと、いくらでも妄想できるけど細かな描写はなく密輸密猟のみに留まるのはもったいない。

思っていたよりは面白かったけど、それはジュラシックパーク一作目が大好きだからか。シリーズ好きな人なら楽しめる、程度の作品になってしまったのが残念。オマージュも多々あるが、必要性なく無理矢理入れた展開で押し付けがましい。オリジナルを作る矜持はないのか。ラストの対決も何番煎じなのか…。

イナゴはもはや言うまい。それにしても杜撰な計画だし、すぐバレるだろうに。しかも緊急事態で恐竜たち集めてどうしたいのか。絶対殺し合いになるよね。電力なくて止まった際の安全面は度外視か。あんなデカい恐竜いるのに、避難所の耐久性はアレでよいのか…。

恐竜たちも種類は豊富だけど行動パターンは同じだし(遊園地的な)、何より動きが不自然な部分やCGっぽさが悪目立ちする部分も多く、技術革新しているのか…??
あとは比較的温暖な気候で生息している恐竜もいると思うけど、あんな雪が舞い散る寒冷地で大丈夫なのか。
さらに、たった数年であれ程繁殖するのは冷静にみてかなり恐ろしいのでは…。生態系壊れるよね確実に。

ここまでが映画に対してのリアリティの感想。もちろんフィクションだけど、それにしても拙いのでは。

そしてストーリーは、クローンの話(遺伝子操作の功罪)に話を振りたいのか、恐竜との共生を伝えたいのか(命は平等)、自然の脅威を伝えたいのか散漫でピンと来ない。イナゴは言うまでもない。黙示録になぞらえたくなったのだろうか。

ストーリーも考証もB級、CGも時々B級。
と酷評しているものの、ファンだからこそ面白かったがファンだからこそもったいなさ物足りなさを感じてしまう。夕日の中のトリケラトプスや冒頭工事現場にいた首長竜など、いいシーンもたくさんある。でもそういうシーンをもっと見たかったんだ。
なんやかんやメイン人物たちの集合には胸踊ったし、マルコムの健在っぷりには笑顔になる。シリーズ完結編として最低限の仕上がりにはなっている。今後恐竜のダイナミックさをスクリーンで観れなくなるのは寂しい。

改めてジュラシックパーク一作目は奇跡的なんだなぁ。SF要素+子との絆構築+恐竜のスリルの共存。たぶんこれからも1は何回も観るしたまに4も観るだろうけど、本作はその頻度はかなり低いだろう。
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