けんぼー

ウエスト・サイド・ストーリーのけんぼーのレビュー・感想・評価

4.0
スピルバーグ最新作『ウエスト・サイド・ストーリー』初日に観賞してきました。

事前に1961年版『ウエスト・サイド物語』を鑑賞したのですが、古い作品にもかかわらず、普遍的なテーマ性を持っていて素晴らしい音楽とダンスに驚きました。同時に「これをスピルバーグが監督するだと!?」と、鑑賞前に疑問が増すばかり。
どうなるものかとちょっと不安になりながらも劇場へ向かいました。

結論から言うと、過去の名作をスピルバーグ風味で「きちんと」ブラッシュアップした現代の名作になっていたと思います。

作品冒頭、上空から取り壊された建物の残骸を映し出し、そこから地面にあるマンホールのようなところにクローズアップしていって、蓋が空いて人が出てくるシーン。
この時点で「スピルバーグ味」を感じ、ちょっとテンション上がりました。

その後の展開は1961年版とほぼ同じなのですが、特に印象的だったのは「構図」と「光と影の美しさ」です。

1961年版は素晴らしい作品でしたが、構図が「舞台的」というか、平面で展開されている印象を受けました。しかし本作では、より立体的でダイナミックな構図となっており、音楽やダンスのすばらしさをより強調出来ていたと思います。
中でも「America」のシーンはパワーと鮮やかさに満ちた素晴らしいシーンでした。

また、スピルバーグらしい「光」と「影」の描き方もとても美しかったです。全編を通して「光」の色鮮やかな表現が施されているだけでなく、「影」「暗さ」の表現も素晴らしかった。特にシャークスとジェッツの決闘のシーンでは暗い場所なんだけども美しさがある、とてもスピルバーグらしい画作りになっていたと思います。

また、配役のブラッシュアップも素晴らしかったです。
1961年版ではプエルトリコ系の登場人物を白人の方が演じ、肌の色を塗っていました。作品を見ていてもその辺が少し気になったってしまったのですが。

しかし本作はきちんとプエルトリコ系の登場人物はプエルトリコ系の俳優が演じており、前作での「課題点」に対してきちんと向き合って「リメイク」することが出来ていた作品だと思います。

なんと言っても「リタ・モレノ」さんの配役が絶妙過ぎて震えました。
まさかあの役回りをリタ・モレノにやらせるとは!
過去作の救済でもあり、現代的な「男に支配されない強い女性」も表現できており、震えが止まりませんでした。

そしてパンフレットは驚愕の2000円越えですが、絶対「買い」の一冊です。
もはや資料集ばりの内容の濃さ、密度でした。

改めてスピルバーグ師匠の凄みを見せつけられた映画体験となりました。

2022/2/11鑑賞