このレビューはネタバレを含みます
おえぇぇぇ、怖い、キモイ、わからないの三拍子が揃った怪駄作。こんな事件がシネコンで起きていることは貴重だからみんな今すぐ劇場に駆けつけたほうがいい。のちのちに語り草になるだろう。
去年の秋口にTOHOで最初に予告編が流れた時に、場内にどよめきが起きたのはよく覚えてます(笑)。全身が怖気立ったのも。
一体トム・フーパーに何が起きたのか。もしかしたら監督契約して現場行ってみたらあのキャラデザが勝手に決められていて最初から負け戦を押し付けられていたんではないか。
と、思ってしまうくらいやはりあの猫たちのデザインがありえない。キャッツ弱者ですが、舞台版の画像を見る限りみんなもっと毛が長くて顔がはっきり見えないようになっていた。
おそらくスターたちを揃えたせいでいろんな忖度やらなんやらが働いて、役者が識別できるけどガッツリ猫というデザインにしたんだろう。その結果マジキモイ。
これこそ「完璧な悪夢」だろう(笑)。
しかしなんだかんだ名作ミュージカルだからだんだんデザインにも慣れて最終的には楽しめるだろうと思っていた自分が甘かった。
そもそもあのデザインに全く慣れないというのもあるが、何より話がわかりづらい。
ファンの方に聞いてみたら舞台版もいろんな猫が出てきて自己紹介のために歌ってパフォーマンスをするという構成らしいですね。
ようするにHigh&lowと同じ構造ですね(笑)。話は二の次。
そして主人公のヴィクトリアはただの狂言回し。あいつが一番デザイン的にはキモいからもっと恐怖をばらまいて欲しかった。
みんな出てきて事務的に出番のショーを果たしてはフェードアウトしていく。正直な話、各歌が事務的に流れて、映像としても役者のクロースアップばかりで面白みがなかったのは『レ・ミゼラブル』のときから感じていたんだけども。
今回はあの言い訳不能なデザインも相まってトムさんの馬脚が現れてしまった感がある。
そしてあのG人間とN人間はキャッツたち以上の悪夢。食うなよ。本気でやめてくれ。どんなホラーでも見るようにしてるけどあれは無理。
レベル・ウィルソン自体は相変わらず芸達者で面白い部分もあったけど、それじゃリカバリーはできないね。
唖然としていると、どんどんどんどん話が流れていって「あれ、この猫っていったい誰でな何のために出てきてるんだっけ」と我に返って頭を抱えること数度。
僕が大好きなイドリス・エルバが出てるのは嬉しいけど、彼のクロネコ?の格好もかなり不気味。普段はプラスの目ヂカラの強さも今回は恐怖と不快さにしか繋がってない。
そして、「キャッツ」ファンを怒らせるようなことを言いますが、
この話そもそも面白いか?どんだけ歌がよくて演者が上手くてもこの話を「面白く」するのは難しいのでは。
宗教観の違いもあるかもだけど、みんな何であんな無条件で天上に呼ばれることを普通に「良きこと」として捉えているのか。最後のみんなが天井に召されていくシャンデリアを見上げているシーンはえも言われぬ狂気に満ちていた。
そして話に乗れないのもあって、名曲ぞろいと言われる歌の数々も全然響かず。いや、間違いなくみんなうまいんだけど、そういう問題じゃない。
まあいいや、そこまではあくまでも出来の悪いミュージカル映画の範疇に収まっていたから。
でもあのラストのカメラ目線大合唱はなんですか?
猫版「トリセツ」みたいな曲だったけど、あそこで急に第4の壁をぶち破ってくるから本気でドッキリしました。
「人間に媚びないのはいい猫」とか言っていたけど、この事件そんな人間出てこないからね。
ラストのカメラ目線はマジで怖い。
しかしまあ貴重な映画体験でした。みんな劇場で目撃してくださいませ。