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キャッツの教授のレビュー・感想・評価

キャッツ(2019年製作の映画)
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T・Sエリオットの詩が原作、というのを初めて知ったのだが、原作となるミュージカル舞台は未観。
あくまで「映画」としてこの作品を読み込むことにした。

恐らく。本作はそもそもが原作由来でプロットというものは存在しない、のだと思う。
そのプロットのない物語をどう映画として観せていくか、という意味では正直大失敗していると思う。

映画にとってひっきりなしに音楽が流れ続けることのしんどさ。タメのない演出と画面構成で、とにかく猫の自己紹介に終始してしまうのは舞台劇ならまだしも、映画では画面がもたない。

物語は抽象的であったとしても、そもそもが語る気がない、というのは映画にとって問題だと思う。
詩的、散文的で、イメージのみであったとしても、映画は基本的に「画面で見せるもの」であるという原則が機能していないためエピソードが生まれていない。
そのため9割ほど、何も飲み込めずに尺だけが進んでしまう。

あとCG処理のダンスシーンが、どう見ても高揚感に欠けてしまう。
巷で言われている通り、造形と動きがなんとも言い難い違和感を生んでしまっている。

最終的には、現代的な「ポリコレ」的なマイノリティの問題へと集約しつつ、「猫」という生き物になぞられたいかにも「英国的」な着地を見せるが、やはりこれも物語として上手に組み込む工夫と術はあったように思うので練り込み不足、あるいは演出ミスが大きい。

後半のバタバタの回収により、最終的に何がなんだかわからない、ということは回避された感があるが…映画としての味わい深さに関してはまったくなかったと言っていい。
音楽のエモーションと映像のエモーションがプロットなしには繋がらないという、割と基礎的な部分で躓いてしまっている、と思うのだが、実際のところ、狙いはどうだったのだろう?
不可思議な作品なのでどこか思考停止しがちになってしまう。
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