恒例のシリーズ時系列
1998年 未見 学校の怪談G「片隅」「4444444444」呪怨の元ネタ
1999年 未見 呪怨 シリーズの原点Vシネマ
2000年 未見 呪怨2
2002年 3.8 呪怨 劇場版 ジャパニーズホラーとして及第点
2003年 未見 呪怨2 劇場版続編
2004年 4.0 THE GRUDGE ハリウッドリメイク、日本人にウケようと思ってない
2006年 3.6 THE GRUDGE 2 リメイク続編、アメリカンホラーに染まった凡作
2009年 3.4 THE GRUDGE 3 リメイク3作目、OVに格下げも納得の出来
2020年 3.8 THE GRUDGE ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷 本作、リブート版
2009年「呪怨 白い老女 黒い少女」2014年「呪怨 終わりの始まり」2015年「呪怨 ザ・ファイナル」2020年「呪怨 呪いの家」映像化の権利を持つのは一瀬隆重で、清水崇のクレジットの無い作品は時系列から除外。一瀬隆重はコンビで2004年「THE GRUDGE」全米興行収入1位を記録、メジャー20世紀フォックスと専属契約を締結。日本人のハリウッド契約は、大正15年に阪東妻三郎とユニバーサル以来の快挙。しかし2012年7月経営不振に依り破産した。
イオンシネマ京都桂川で鑑賞、全国でも珍しい木目調のイオンです。中国ウイルスの影響とは言え上映館が全国で10館と少な過ぎ。全米では2600館で公開、北米ランキング5位で制作費は1000万$、ワールドで4000万$稼いだ。レビュー済「ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷」Eli Rothと同じく、Sam Raimiも才能の枯渇は隠せない「死霊のはらわた」プレイステーション5の新作に関わる等過去の遺産で食い繋いでる、映画の新作が「ドント・ブリーズ」続編を含む6本待機中、是非私の鼻を明かして欲しい。
本作はホラーの第一人者Robert Tapertプロデュース。Sam Raimiは名義貸しの立ち位置。Robert Tapertはレビュー済「ドント・ブリーズ」をヒットに導いた実績も有り、遡れば「死霊のはらわた」も彼の製作。彼の様な目利きが中古車屋で雨に打たれ錆び付いた「呪怨」をリブートするのか謎だが、主導権はSam Raimiが経営するホラー専門会社Ghost House Pictures。プラムハウスやA24と言った新興勢力を指を咥えて眺めるに忍びなく、安い版権を探す中で「呪怨」が選ばれた。
同じジャパニーズホラーをルーツに持つ「ザ・リング」実はソニー・ピクチャーズが製作する前提で進められた。日本を知るソニーが作るのが自然の流れ。しかし直前にドリームワークスに浚われ悔しい想いを忘れないソニーが、本作の配給を引き受けた事から、プロジェクトも配信から劇場公開に格上げ。それは俳優陣を見れば一目瞭然。製作開始は2011年、随分と時間が掛かった理由はこの後すぐ。
実は監督が決まらない中でプロジェクトが先行。村上龍の同名小説「ピアッシング」を監督した日本大好きNicolas Pesceが、リブートする脚本で進められた。当初はレビュー済「ペット・セメタリー」Jeff Buhlerが過去の作品と繋がらない全く新しい脚本を書いてる途中で、過去作とのリンクを重視するるソニーの意向で交代。Jeff Buhlerは原案者として名を連ねる、この時点で2014年3年。結局脚本を書いたNicolas Pesceが監督する事で決着。当初のタイトルは「GRUDGE REBOOT」だが、公開直前にソニーの意向で変更。
年間で洋画300作品を見るなら邦画は1本しか見ない私からすれば「呪怨」シリーズの面白さの理由も俯瞰的に分る。意外とホラーに詳しい人に聞いても上手く説明できない様だが、日本独自のホラー「心霊」はアメリカの宗教的概念「悪魔」では無く、日常に潜む身近な恐怖が伝染する事「リング」が正にソレ。父親を殺してでも子供を守る松嶋菜々子、それを納得して殺される父親。日本人には腑に落ちる死生観かもしれないが、悪魔より怖いのは人間として私達が想像する以上にアメリカ人を震え上がらせたのです。
本作はハリウッド・リメイクの第1作を強く意識した。日本通のPesce監督は原作のエッセンスを詰め込もうとして、結果的にシナリオが渋滞するジレンマに陥る。東京の民家(全てCG)からのプロローグ、登場人物のパートがランダムにインサート。良く出来たホラーは俗に言う「一本道」で、物語がレーンチェンジを繰り返すと「何が原因で怖かったっけ?」と思い出すようではダメ。Lin Shayeと言う素晴らしい食材をソニーが用意したにも関わらず惜しい仕上がり。マシスン家やスペンサー家のプロットは、料理の仕方に依っては面白いスリラーが作れた素材。演出に自信の有る監督ほど、シナリオをシャッフルしたがるが、見事ド壷に嵌った。
邦画ホラーに詳しい友人と一緒に観た時に最近のJホラーの質の低下は嘆かわしい。清水崇も最近は酷いモノだ。其れに較べれば全然面白いと意外な評価。邦画版へのリスペクトも感じられ、Netflix「呪怨 呪いの家」と同じく日本的な神経系ホラーな作りも良い。真木よう子「洋子」Sarah Michelle Gellar「カレン」など過去作とのリンクを丁寧に拾ってるのも好感触。伽椰子や俊雄が出ないから評価を下げてる奴は、これがアメリカ人向けに作られた作品だと理解出来ないガラパゴス脳と語気を強めた。大声で熱く語るのは良いが、お前此処はイオンの回転寿司屋だぞ"笑"。
今の社会情勢とホラーは「接着性」が薄い。リアルに中国ウイルスの恐怖に日々晒されてる私達が、趣味の世界にまで「恐怖」を求める人は確実に減ってる。他人の事はお構いなし、今が楽しければそれで良いとコンビニの前で酒盛りを初める非常識人は京都にも少なからず散見される。ワクチンが行き届き、社会が安定し健康に不安も無く日々の暮らしが同じ事の繰り返しで初めて、刺激を求めるホラーの出番がやって来る。あと、もう少しの辛抱なのだ。
年に一本しか見ない邦画に監督繋がりで「犬鳴村」を観ようしたら、全力で止められた。そないにダメなん?"笑"。