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男はつらいよ お帰り 寅さんのゲタのレビュー・感想・評価

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『私事ながら』

かつて「男はつらいよ」は
我が家の団欒において
切っても切れない存在でした

大晦日になると決まって親父が
「よし、寅さん観に行くぞ」と
2つ上の兄と連れ立って
大いに笑って年を越すのが
親父が決めた年中行事でした

お袋も正月の準備で忙しく
煩わしい面々が家にいなくなるのが
ありがたかったようです

そして観に行った「寅さん」は
半年か一年経つと
木曜劇場などのテレビで放送され
そこではお袋も一緒になって
"最新の寅さん"を観返します

でもお袋と観る寅さんは
子供心に実はとっても嫌でした

なぜなら大いに楽しく笑う映画なのに
いつもは涙も見せないお袋が
決まって映画の最中に泣き出すのです

これが本当に困りました

だから小生の寅さんの思い出といえば
大晦日の親父と兄との映画館と
親父が好きで決まって劇場で買って
「どうしていつも高いところで買うの!」
と必ずお袋に怒られる
ナッツ入りのチョコと
そしてお袋の涙でした

やがて年月が経ち
渥美清さんが亡くなられて以降
この両親の息子達も幸いなことに
いっぱしの大人になって
それぞれが家族を持ち

いつしか寅さんは
実家に戻った折に家族で話題にするだけの
遠い過去の楽しかった記憶に
なったのでした

それが…

20数年の時が過ぎて
こうして映画館で「寅さん」を観ている
小生が人目を憚らずに
涙を流していることに
深い感慨を覚えました

きっとそれは映画の評価というより
こうした家族の思い出も含めて
感情に来てしまったせいだと思います

きっとあの頃のお袋も
こんな気持ちで涙を
こぼしてたんだろうな、と

なのでこんな心持ちと私事で
この映画のスコアをつけるのは
とっても不公平な気がして
無投票なのはそういう理由からです

先頃老いて体調も思わしくない
実家のお袋と共に
今年の大晦日にでも家族四人で
劇場にまた観に行こうかな
なんて思っています

その時は思い切り親子共々
寅さんとその家族達の“今“の物語に
大いに涙することでしょう
心の底から

親父がまた買ってくれるであろう
ナッツ入りのチョコをかじりながら…

[08:30]スクリーン1️⃣

P.S.
こんなに素敵な作品に
端っこの端っこと言いながら
エキストラとして参加できたことを
本当に誇りに思います

JJ・エイブラムスじゃなくて
ちゃんと山田洋次監督がメガホンを
取っている喜び
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