朝田

男はつらいよ お帰り 寅さんの朝田のレビュー・感想・評価

2.0
過去の「男はつらいよ」のシーンの数々と、現代のシーンが交互に語られていく。過去の集大成的な作品でありながら、最新の技術を用いた今にしか作られ得ない映画だと言える。基本的には固定カメラで堅実にカットが割られていくが、泉とその母が満男の車の中で揉め、母が外に降りるシーンだけは手持ちカメラで捉えられる。さらに、満男が車に戻ろうとする泉をなだめ母の元へ行かせるまでをワンカットで捉えられる。このようにカットのリズムとカメラワークを急激に変化させる事で何気無いシーンに緊張感を与えている。ここは良かった。ただ、山田洋次らしいとしか言いようがない過剰な演出やカメラワークはやはり目に付く。まず作品全体が過去作のインサートが挟まれる構造なのにも関わらずそのシーンの解説のような満男のモノローグが付け足されている。これは説明的であるし、過去作の余韻を削ぐ蛇足になってはいないだろうか。泉を想う満男の様子を、過去作をインサートするように、泉の泣いた横顔を捉えたカットをわざわざフラッシュバックのように見せるのも過剰。また、泉が、満男のサイン会の紙を見つけるシーンは、その紙に二回もカメラが寄る。これは泉の驚きを表現していたとしても、それ以上にあざとさが残る。それ以外にも映像面における疑問は残る。特にオープニングの満男の観る夢を描くシーンは、スローモーションを多用する手法で描かれるが、極めて古臭く感じる。また、役者が泣きの芝居をするシーンにこれみよがしに感動的な音楽を鳴らす演出も鼻白んでしまった。こうした過剰な演出やらカメラワークがあるのは残念だった。
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