この映画は、寅さんを懐かしむ懐古装置だ。好き嫌いの話だが、本作自体は愛すべき作品にはならないと感じてしまう。
倍賞千恵子、前田吟がさくら、ひろし役でリアルタイムで観れる幸せ、寅さんをまたスクリーンで観れる幸せ。倍賞千恵子の声や話し方なんて、昔のさくらそのもので驚くよ。
それは分かるし、リアルタイムで観てきたら昇天ものでしょう。ただ、満男やみんなが不自然なほどに寅さんを懐かしみ、正直今を生きていけるんですか？と思うほど寅さんの後姿に囚われてしまっていて、精神が不安定なのかと心配になる。
満男の物語なんだけど、感情的になるのは寅さんのシーン。男はつらいよは、寅さんの映画なんだと再認識させられる。
満男に何かを語らせる気がないなら、満男じゃなくていいし、懐古させる以上のことができないなら、普通の男はつらいよをスクリーンで流した方が何百倍も面白いよ。ファンムービーと割り切れば、面白いのでしょう。
と個人的贅沢な不平を申し上げました。
