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男はつらいよ お帰り 寅さんのmuraのレビュー・感想・評価

4.5
スクリーンに復活した寅さんを見に行ったつもりだったけど…映画が始まって思った。寅さんじゃなく満男を見に来たんだと。大人になった満男を。満男とまったくの同世代ということもあって。母のさくらが満男と歩きながら言う。「何とか食べていけるの?」。何でもないシーンなのに、グッときてしまった。

満男は中学生になる娘とふたり暮らし。妻は6年前に亡くしている。会社を辞めて小説家を目指していたが、ようやく売れるようになり、あるとき書店でサイン会を開く。そこにあらわれたのは初恋の相手である泉。海外で働く泉が帰国していた。ふたりは再会を喜び、さくらと博が住む柴又を訪れて懐かしく語り合う。もちろん寅の思い出も…

過去を振り返るなかで寅さんの映像がたびたび差し挟まれる。いつどこで見たのかはわからないが、おぼろげに憶えているシーンの数々。でも、物語は現在を舞台にしていてそこから離れることはない。それが悪くなかった。あくまでも今の作品になっていた。

今の世では絶対に面倒くさがられるんだろうけど…ひとの懐深くまで入り込んできて、それでいて関係づくりは不器用。でも、正直さと優しさだけは絶対に失わない。それは寅さんに限ったことじゃない。満男をはじめとするまわりにも影響を及ぼす。

今の日本に必要なことだなと。いや、僕にも。このシリーズが始まったときにはそんなつもりはなかったんだろうけど、時代がメッセージ性の強い作品に変容させたような。

満男が言う。「大事なところで逃げ出す。それが伯父さんの悪いところだ」と。でもそれこそが寅さんの愛すべきところ。不器用だから寄り添ってくれているように思えるんだと。「奮闘努力の甲斐もなく」だからいいんだと。って、ほとんど映画の感想ではなくなったな 笑
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