とむ

男はつらいよ お帰り 寅さんのとむのレビュー・感想・評価

3.0
社会人になってから家族で揃って映画を観るって機会が極端に減った。
だってやっぱり何処か小っ恥ずかしいし、
自分が映像の勉強をしていたこともあってか、変に知識人ぶった感想を言ってしまう自分を何となくダサいと思ってしまってたのも大きい。

でも今回久々に家族でこの映画を見た。
だって、「寅さん」だし。


うちの父親が大の寅さんファンで。
土曜になるとWOWOWだかBSだかで毎週やってる寅さん特集をビール片手に観るのを楽しみにしていて、それを離れたソファで嫌な顔しながら見てる母親って構図がうちの家族のデフォルトなんですね。

だから自分も寅さんのだらし無さとか、
何故か(子供心には本当に何故か)女に好かれる感じとか、
何よりいつもはフーテンでどうしようも無いオッサンが時々見せる妙な心強さもやっぱりよく知っていた訳で。


僕にとって山田洋次の映画といえば「説明のしすぎで、態とらしくて、ダサい。」
割と途中まで悪くないなーと思ってた「小さいおうち」も、
最後に妻夫木くんが全部言葉で説明しちゃうところで「うわー、ダサいなー」と思ってしまったのが勿体無かった。


でもこの映画は「寅さん」。
台詞で説明しすぎでも、態とらしくても、ダサくても、それで良い。いや、それが良い。
だってそれこそが「寅さん」っていう男の人と成りなんだもの。

「こんな奴いねーよ!」とか、
「こんなこと言わねーよ!」とか、何度思ったところで、これは「寅さん」。
仕方がない。だって、「寅さん」なんだから。言うよ、そりゃ。


僕はこの映画を「寅さん」のガワを被った「ニューシネマパラダイス」だと思ってる。
ラストの演出なんか、まんまそんな感じ。
それはつまり、アルフレードがトトにあのフィルムを贈ったように、寅次郎が満男に…いや。
山田洋次が、これまで49作の「男はつらいよ」ファンの観客に送る、ある種のラブレターみたいな作品だろうな、と思った。


父親がこの映画を見て、「映画館で観たかったなぁ、映画館で見たら泣いてたかも知らん」と呟いていた。
60過ぎの生粋の寅さんファンにそこまで言わせちゃ、大成功と言わざるを得ないよな。天晴れ。
とむ

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