チーズマン

きみと、波にのれたらのチーズマンのレビュー・感想・評価

きみと、波にのれたら(2019年製作の映画)
3.6
これが実写だったら普通だけど、アニメでイチャイチャされると何だか異常に照れ臭く感じてしまうのはなぜだろうか。
そこに川栄李奈の声優として非プロ感が非常に良い塩梅で混ざって、前半はなんだか凄いことになっていた。


湯浅政明監督、ぶっ飛んだセンスの映像表現が特徴なのは皆が知るところだけど、実は音楽に対しても意識を持って毎回情熱を注いでいる作家。

でも湯浅監督の変わってるところは単に劇中の音楽の使い方がカッコいい!とかじゃなくて、もっと本質的な音楽の「機能」や「性能」の側面にフューチャーした上で我々の日常の中での音楽の役割を提示することをなにげに毎作品やってる。

そんで、今作は絶対に壊れない「記憶媒体」として音楽をとらえた時のハンパない高性能っぷりに焦点を当ててる。
写真や動画は壊れるけど、音楽自体は“物”として存在してないから壊れることもないからね。
なんなら1つのフレーズだけで、その時の情景や匂いや感情まで一瞬で読み出すことが出来る。

ということで思い出をパッケージするのに音楽はとても相性がいいのは今更説明されなくても誰でも感じてると思う。
ただ、それをこの映画では思いっきり“可視化”しちゃってるところがすごい面白くて。

だって明らかに変テコな異物。笑

でもそれをアリにできる、変さも含めて作品の引っ張りにできる、その辺の感覚が湯浅政明らしいなあと思った。

壊れない記憶媒体としての音楽で言えば、ピクサーの『リメンバー・ミー』なんかまさにその性能面そのものを物語にしたような映画だった。
でもあれは“可視化”とは違うし、きっとピクサーのような集団知では選ばない、いや選べない。
作家性の監督の面白さはこういうところだと思った。

そして、実は話はストレートなラブストーリー。
なにげに湯浅政明監督作品の中でもポップできれいにまとまった作品だった。
見やすい、見やすい。
あの良い意味で、見てられないほど照れ臭い初々しい気持ちを劇場で味あわせてくれるだけでも観てよかったなと思う。

しかし『海獣の子供』と同時期に観た影響もあると思うけど、ちょっと物足りなかった。

同じ監督湯浅政明&脚本吉田玲子コンビならば前作の『夜明け告げるルーの歌』での、音楽が持つ「解放!」の機能面、その一点突破に全てを賭けた、色々と不格好なバランスの映画だったけどそちらの方がチャーミングで好きかなと思った。