にしやん

SHADOW/影武者のにしやんのレビュー・感想・評価

SHADOW/影武者(2018年製作の映画)
3.5
「三国志」の中の「荊州争奪戦」を大胆のアレンジした武侠アクションもんや。架空の国、沛〈ペイ〉国の国王、重臣の都督、都督の影武者、都督の妻のこの四人を軸にストーリーが進んでいくわ。 

監督のチャン・イーモウっちゅうたら普通「赤」やろ。「紅いコーリャン」の「赤」もそうやったけど、そのあとも「赤」が綺麗かったな。それがなんか知らんけど、今回は「墨絵」「水墨画」の世界や。映画の最初から最後まで降りしきる雨空の「灰色」に始まり、登場人物の衣装も白と黒、灰色。さらに城や屋敷の中に掛かる懸垂幕の文字かて墨や。色が付いてんのは人の顔くらいやし。

この白と黒の世界に「陰」と「陽」がダブるねん。光と影やな。「影」についてはズバリ影武者っちゅうことなんやろけど、「謀略」や「陰謀」も影やろ。あとは「男」と「女」もそうやな。「本物」と「影武者」、それに「本物」の妻との、モヤモヤっちゅうか、ドロドロした三角関係かてストーリーの上で重要なプロットになってるわな。

せやけど、はっきり言うてこの映画の見どころはストーリーとはちゃうわ。いっちゃんの魅せ場は主人公が「傘」の武術を完成させるシーンとちゃうかな。いっぺん負けた敵の長い刀にどうやって勝つんんかっちゅうことなんやろけど、その稽古をするシーンや。長刀に対して傘で立ち向かうねんけど、長刀の力を、傘のしなやかさで奪い取ってまうっちゅう作戦や。このシーンがまるで舞踊(ダンス)みたいやったわ。わしは、このシーンがこの映画でいっちゃん印象的やったわ。

他には、傘を重ねてベイブレードみたいになって敵市街の坂を整列して下っていくとこやとか、傘を武器に戦うとことかも、見どころではあんねんけどこれらは「予告編」で観た通りや。あとは琴や笛とかの楽器の演奏シーンでも、たぶん吹き替え無しで俳優等が自分等で演奏してたりやとか、CG、VFXほとんど使わんと、俳優の肉体を目い一杯駆使した戦闘シーンはそこそこ見ごたえあるわな。

ストーリーの展開やけど、始まってから中盤にかけての全体の6、7割が平坦や。後半からラストは、中盤までとは打って変わって最後の最後までどっちに転ぶんか全く分からん怒涛の展開。ラストは二転三転四転のどんでん返しで何が何やら分からん感じやったわ。起承転結や無うて、起承転転って感じやな。最後は影武者がどうのこうのとかどうでもようなってしもてるんとちゃう?

画面に色味がいっこもあれへんのも手伝ってか、中盤までは映画の中の敵や無しに、自分の内なる睡魔との戦いかもしれんな。なんとか中盤までを乗り切れたらそこそこおもろいんとちゃうかな。勧善懲悪では割り切れへん終わり方やし、それなりのカタルシスはある。何とか中盤まででめげんと、終盤まで辿り着いてほしいもんやな。そんな感じやわ。
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