仏カイエ・デュ・シネマ誌2018年ベスト1。フランスのカルト監督ベルトラン・マンディコの長編デビュー作。パートカラー。
20 世紀初頭。良家出身の 5 人の少年が女性教師を暴行する。罪を償うため謎の船長に預けられた少年たちは過酷な航海の旅へと連行され、ある無人島に座礁するが。。。
1980年代の日本のアングラ演劇のようで少し面白かった。それにしても、見た目も質も明らかにB級な本作を年間ベストに選出するカイエ誌のセンスは興味深い。
誰も指摘していないが“良家の不良少年5人と船長”という設定は三島由紀夫『午後の曳航』(1963)と全く同じであり、本作の源泉になっていると考えて間違いないだろう。同作は三島文学の中でも『金閣寺』(1956)と並んで欧米人気が高い。『午後の曳航』では少年たちの船長殺しが無罪放免で終わるのだが、本作はタランティーノ監督のような“歴史修正”を行い少年たちを懲らしめ更生させる内容になっている。
その更生方法が本作の肝となっていて、無人島の超自然的な力によって少年たちの暴力性=男性性を女性化することで無化するというもの。演出にも大仕掛けがあるため事前情報なしで観た方が楽しめるだろう。
毛の生えた船のマストや果実など生理的嫌悪感を誘発する美術はかなり頑張っていて楽しい。残念なのは撮影で、白黒でそれらしく撮ってはいるのだが安っぽさが否めない。幻想映画に必要な強度のあるロングショットの無い事が予算と実力の不足を物語っている。
マンディコ監督はファスビンダー監督を敬愛し、日本では若松孝二監督と鈴木清順監督が好きだと語っている。いかにも本作からは監督の嗜好がストレートに反映されている。三島由紀夫に関しての言及は見つけられなかったが、『午後の曳航』とのあからさまな共通点や表面的な同性愛表現への指摘を避けるため控えたのかもしれない。
ちなみにW.S.バロウズのSF小説に少年ゲリラ集団“ワイルド・ボーイズ”を描いた同題小説「The Wild Boys: A Book of the Dead,」(1971)があるが原作ではない。ただし同性愛の要素や幻想エロスなど多大なオマージュは感じられた。
難解さはなくキレイめに耽美エロスを描いたアングラ映画の入門編的一本。エンドロールの後にワンシークエンスあるので見逃さないように注意。