せいか

シンクロ・ダンディーズ!のせいかのネタバレレビュー・内容・結末

シンクロ・ダンディーズ!(2018年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

優しく見積もって☆0.5としたい。

7.20、レンタルDVDで視聴。
元ネタを同じとするフランス版のほうは観ていない。こっちはイギリス版。

以下、メモなので雑多につづる。

主人公は郊外辺りのそれなりに閑静で余裕のある住宅地に住まいを持ち、妻と一人息子がおり、大きな企業(?)で課長あたりのポジションにありそうなザ・中年男。日課は仕事終わりのプール通い。一日一日は同じことの連続で仕事も怠慢にこなすことを覚えていて、ぼんやりしているうちに何もかもが終わる。
そんな中、妻が地元の議員に選ばれると途端に彼は日常の枠から外れた妻に嫉妬を露わにして精神を持ち崩して愚行に愚行を重ねる。妻が自分は知らない世界に属することを認めないというか、ある種、妻を自分の持ち物として見ていた人なのだなということが主人公同様の怠慢なテンションで冒頭で表現される。
そんななので妻から真正面に自身の問題点を指摘されたりもするが、彼のほうは真正面から相手を見る勇気もなく、好き勝手子供じみたことを言うわりに真摯さは欠片もない。ティーンエイジャーらしき実の息子も呆れるほどの駄目なやつっぷりで、実にそこら辺にごろごろいそうな精神的に幼いままながらも社会に馴染んではいる中年男性という感である。このでっかい赤ちゃんが主人公というわけで、なかなか生々しくて冒頭から結構しんどいところがある作品である。
というか、『プロデューサーズ』なんかも思い出すが、会計士を人生が死んだような仕事にするイメージが何かあるのだろうか。数字に囲まれて黙々と似たようなことしてるイメージだからそうなるのかな。

彼はプールに潜ることで一種、静寂と平穏を得て、瞑想的なものを味わう。のだが、潜るたびにやや幻想的におっさんたち(のちにシンクロのグループを組む)が水中にいるイメージがカットとして映り込む形でだんだん彼の人生と交錯してくるので、なかなか、なかなかなんとも言えないものがある。
ともかくもかくして人生の危機に沈み込んだ彼はおじさんたちによるシンクロクラブに加わることになり、仲間のみ彼らも各々に人生の無意味さに酔いしれていたりなど、それぞれの中年の危機の最中にあることが分かる。なんというか、ヴァージニア・ウルフなんかも中年の危機はテーマとしていたけど、やはり、こう、いかんとも、いかんとも言い難いな! どっちもそれぞれに生々しいんですけども。

シンクロクラブは彼らの苦しみを癒やし、日常を忘れるために発足されたもので、そういう逃げ場を作ることそれ自体はよいのだけど、反面、延々自分の問題から逃げ続けることにもなるのだけど、本作ではそうはならずにうまいこと自分を見つめ直す場所となっていくのだろうな。
ともかくもこうして彼は現在の問題から目をそらし、仕事はさらにおざなりになり、シンクロに頭がいっぱいになりながら日々を過ごす。家なんかは家出してホテル住まいになっている。

子供が多い老若男女が集うパーティーの余興にいやいや出るところからも、女のイメージが強いものをへたくそなおっさんたちがわらわらと不格好に御披露目するという中盤近くのシーンはなかなか印象的だが、とくにその枠を出ることもなく、そこでたまたま世界大会の存在を知って、それを目指そうというほうにそのまま話はなだれ込む。
とはいえ、この世界大会参加の是非に関して、クラブの高邁な意志に反するから嫌だとかいうのがあったり、要は恥ずかしい思いはしたくない、何かのために頑張りたくない、変わりたくないみたいな中年の意識がにじみ出ていて面白くはあった。
本作、自分を変えていくこととか変化していくことと中年に至りそれを自分では認めないけど恐れていることについては丁寧に描いているとは思う。
結局ぐだぐだした末に国際大会参加を決めてからプールのコーチにギチギチにしごかれていくんだけども、そのへんのコミカルさは単純に好き。
そんでまあこの転機によって主人公はそれぞれの人生にある仲間たちの境遇を知り、シンクロの恥からは逃げ出さないように向き合おうとしてまあ混沌としながらも彼らは熱心に練習を重ねていく。

面白いのは、本人たちよりも主人公たちの家族のようにむしろ周囲のほうが主人公がシンクロをしていることを否定的に見ていて価値観に囚われていることだと思う。でもジェンダーがどうのとか、いい歳したおっさんがどうのとかで否定的に見られてるというよりは、家族のことをまともに捉えもしないでいろいろから逃げ続けてる駄目中年がいきなりシンクロなんてしてるがゆえに否定的に見られて勝手に疎外感感じてるという描かれ方でなかなか辛辣である。中年の問題だなあ。

主人公はミラノ入り当日にほぼ衝動的に怠慢に続けていた仕事を辞めて妻に飛行機のチケットを押し付けて飛行機に乗る。それはそれでいいのか……。
そんで当日に入っても相変わらずその場その場でいろいろがあってぐだぐだな中、本番を前に仲間が心をおれると、主人公は自分がいかに駄目なやつだったかを自覚してこれを語ることでチームを一つにまとめるのである。
ここにくるまでにチームの人とそれなりに語ったりしてはきていたが、いきなり賢者めいて自分を自覚できて、何……何……?て感じではある。このへんはなんかそういうもので話が展開する。
で、なんだかんだ演技は好首尾におわり二位を獲得する。
コーチはなんか、「あなたたちは傷だらけで」「美しい」みたいなことを言ってまとめて、離婚して舟生活の仲間が彼女にチューしてプールにドボンって、そう、そうね。
で、主人公の奥さんが市民たちが外で騒ぐ中議員の会議を殺伐として進めていると仲間たちを引き連れた主人公が水着姿で踊り出してみたいな、何……何……?
で、息子も今のお父さんを受け入れて、主人公は解散を促した勝手にライバル視していた議員の男を殴り飛ばして、妻は彼をだきしめて大団円。何……何……?

本作、カオスであることはよいことだというところがあってずっとそうなのだけど、それにしたって、それでいいのか???というか。

主人公に関して言えば最初の生きながら死んでいるような人生からは少し脱却しているのでハッピーエンドではあるのだろうけれど、何……何……?
せいか

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