にしやん

スノー・ロワイヤルのにしやんのレビュー・感想・評価

スノー・ロワイヤル(2019年製作の映画)
3.7
舞台はコロラド州のスキーリゾート地で、息子を麻薬組織に殺された父親の復讐を描いたリーアム・ニーセン主演アクション・コメディ映画や。元作品のノルウェー映画「ファイティング・ダディ」とおんなじ監督による、舞台と役者を変えてのセルフリメイクもんやな。リーアム・ニーセンの実の息子が息子役してる出てるんもちょっとした話題やな。初共演らしいわ。
観てまず最初に思たことはタランティーノの「パルプフィクション」になんか雰囲気が似てんなっちゅうことや。調べてみたら何と製作者が一緒やってんな。そういうことかいな。
この作品、ブラックユーモアが好きな人には絶対に観てほしいわ。表向きクールで硬い感じすんねんけど、ジャンルは完全にコメディやわ。はっきり言うて、おもろい。劇場でも何遍も笑いが起きてたわ。
所謂復讐もんなんやけど、よくありがちな実は主人公は元軍人やったとか、元警官やったとか、殺し屋やったとかそういうんやなく、単なる除雪作業員で、完全に一般人や。華麗なる復讐劇が繰り広げられるっちゅうことでは全くなく、どっちか言うたら行き当たりばったりで、どこかそれも事務的に淡々とや。そんな様子がシュールな雰囲気を醸し出しとる。それにこの行き当たりばったりがやな、とんでもない勘違いを引き起こして、それがエスカレートしていった挙げ句に、予想外な事態になって発展していくストーリーラインそのもんが、この作品のブラックユーモアの根っこにあるわ。最初は最愛の息子が殺されるっちゅうシリアスな展開やのに、途中からは「ひょっとして、こいつら皆アホちゃうか?」みたいなことになってきて、最後は「なんじゃこりゃ?」レベルのとんでもない話へ発展していくんや。そういうどこかシニカルで意地の悪い話が好きやっちゅう人にはこの作品はたまらんのちゃうかな。
それと、本作の原題「Cold Pursuit(冷たい追撃)」が邦題の「スノー・ロワイヤル」に変更されてんねんけど、これって邦画の「バトル・ロワイヤル」を多分意識してるんやろな。何でか言うたら、劇中人が殺されるたんびに、殺された奴の名前とニックネームがテロップででんねんな。一旦スクリーンが暗転して十字架入りで。それも最後まで徹底的にや。わしこれ観た時に思わず深作欣二の「バトル・ロワイヤル」思い出してしもたわ。それにこの演出が、また黒い笑いを誘うんやな。
またこの映画、元々の自分等の土地を奪われたネイティブ・アメリカンについてもたっぷりと描かれてるわ。わしがエエなと思たんは、彼らネイティブ・アメリカンをバカにしたりする奴等をめちゃくちゃ憎たらしく描いてるとこやな。作り手側はこの差別の問題にもちゃんと真面目に向き合ってて大変誠意も感じるんやけど、しっかりと“差別ギャグ”にもそれを活かしてたな。それに、ラストシーンでネイティブ・アメリカンのマフィアのボスと主人公とのちょっとしたシーンがあんねんけど、あれはめっちゃ良かったな。思わず胸が熱うなったわ。
他にも登場人物はとにかくクセもん揃いでギャグも満載や。中にはストーリーに何も関係ないようなナンセンスもんもあるしな。
この作品の特徴は確かにコメディ要素やとは思うねんけど、アクションもちゃんとしてるし、クライムサスペンスとしても充分おもろいし、人間ドラマとしても中々深いもんもある。そういう意味でもよう出来てる作品やな。リーアム・ニーソン主演のアクションもんの中でもファンの評価がめっちゃ高いんも頷けるわ。リーアム・ニーソンのファンはもとより、ブラックユーモア好きにはオススメの映画やな。
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