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テッド・バンディのJIZEのレビュー・感想・評価

テッド・バンディ(2019年製作の映画)
3.8
1974年から1978年にかけ少なくとも30人以上の女性を惨殺したアメリカ史上最も有名なIQ160のシリアルキラー"テッド・バンディ"の全貌をバンディの恋人視点で迫ったスリラー映画‼︎まず今回のレビューで無事1300本目に突入しました‼︎日頃からレビューを読んでくれてる皆さま誠にありがとうございます。今後も以前のように劇場で最新作を追える日が完全に戻るコトを願って止みませんね。では、本論に戻ろう。原題の「Extremely Wicked,Shockingly Evil and Vile」は"極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣"という終盤で裁判長が放ったワードから派生しているが、バンディが第一級殺人での有罪判決をくらい"非人道的で残忍な人間"として刻印されたその象徴に帰着している。端的にバンディ演じたザック・エフロンの敏腕な名芝居により元々のシナリオの標準値を軽快に更新できたように思う。つまりプロットそのものや題材そのものはスリラーというより備忘録のような俯瞰的なカタチでバンディの表面を追いかけつつ進行する。なので殺人鬼の伝記映画ではない点は良くも悪くもこの映画の争点としてはある。ぶっちゃけバンディ自身が"悪"という認知も、映画の最後の最後まで理解がとうてい及ばなかった。いわゆる彼の雄弁な物言いと、端正なルックスから笑みをもらす立ち振る舞いまで殺人鬼としての形成がほぼ描かれないため、映画を観てても結構翻弄される。刑務所へ投獄されては脱走してのくだりもパピヨンの小説とか懲りずにクラブで女ナンパしてる姿とかは皮肉にも笑える。本作は殺人鬼が決して暗闇から現れるとは限らない。人知れず身近に潜伏してるコトの警鐘を鳴らしてるように思えた。つまり"大好きな人や仲間、尊敬する人が突然悪魔のように豹変する"コトへの呼びかけを唱えた社会性に飛ぶ犯罪映画の秀作だ。

→総評(現実を想像できる者は少ない。by ゲーテ)。
総じてザック・エフロンの悪役像が整合性とれ過ぎて最高、の感想には結局のところは尽きる。既存映画の殺人鬼ものからシリアルキラーの恋人視点で読み取く視点の多様性は画期的で発想がおもしろい。いわば好青年のバンディ自身が実は…の殺人鬼の形成過程が割愛?されてるため、実際のところこの映画を観た我々は彼が本当にあのような卑劣な犯罪を犯したか、どうかは断定できない。また時折魅せるバンディ自身の人格が入れ替わったような無機質かつ無表情になる感じや最後の最後で恋人との面会室のガラス窓を通じて指先でなぞる戦慄するあの演出の感じなど、エクスキューズ込みで我々はバンディのおそるべし素性をまざまざと間接的に納得させられる。リリーコリンズが演じた恋人役の信じて"待つ"しかできない者が最後の最後でああなっちゃう感じもジブンの立場に置き換えれば確かに気が狂いそうになる。上述したがジャンル系譜として"安全地帯に共にいた身近な人間が実は…"の発想などシリアルキラーものとして昨年みた『サマー・オブ・84(2019年)』でのあの恐怖感と全編に通底するやだ味は酷似している。本国アメリカではネトフリ配信で劇場公開すらされなかったそうだが、本作はザック・エフロンの凄味のおかげでココまでの認知を稼げたコトは言うに及ばないだろう。本編でゴア描写は一箇所もありません。興味を得た者はネトフリ配信で『殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合(2019年)』をお勧めしたい。というようシリアルキラーものとして激ヤバ映画ではなかったが、恋人との関係性や脱獄シーンなどドラマ性もやや盛り込まれ、非常に"世の中を翻弄した男の姿"がまざまざと映し出されている。
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