東京フィルメックスにて鑑賞。
ホン・サンス監督ならではの会話劇を堪能できる作品
偶然から生まれる人の出会いや、人の生き様を思う作品だった
川沿いにあるホテルに宿泊する詩人
彼の元に訪ねてくる二人の息子
そして、同じホテルに泊まる二人の女性たち
彼らは、そのホテルで偶然に出会う
ホン・サンスの映画が面白いのは、日常の一場面をそっくりそのまま切り取ったようなところにあって
とくに事件が起きるわけでもなく
ただ会話が進んでいき
その会話の中から、いろいろと考えさせられていく
この映画では、地方のホテルで暮らす父と、その様子を見にきた息子たちの会話がメインで話が進んでいく
その中で、父は立派に育った息子たちに目を細めつつも、巣立ってしまった寂しさも感じている
そこへ現れた美しい女性の二人連れに心を奪われてしまう
子供たちが立派に育って巣立っていったことに、父は寂しさを感じていたようだけど
そのタイミングで妻と別居を始めたあたりに
人生を整理しようとしていたのかなとも感じられる
その一方で、美しい女性たちに
ナンパするみたいに声をかけていたのは、もう父ではなく、男として生きたかったのではと感じさせた
この映画の舞台挨拶には
主演のキ・ジュポンさんがいらしてて
「個人的に悲しい出来事があって
そんな時に、一緒に映画を撮らないかと、声をかけてきたのが
ホン・サンス監督だった」
と話されていた
そんなキ・ジュポンさんの寂しさが、この映画に現れているような気がした
時折、笑えるところもあったけれど
冬の川沿いのホテルにピッタリな
流れていく人生と、彼の家族、そして偶然に巡り合う人々を描く
ちょっと寂しい物語だった