歌うしらみがおりました

狼よ落日を斬れ 風雲篇・激情篇・怒濤篇の歌うしらみがおりましたのレビュー・感想・評価

3.5
時代の変化にすんなりと順応していく"勉強熱心な"オッサンよりも、時代に取り残され、困惑するオッサンの方が個人的には涙してしまう。だから当たり前にちょんまげを切り、自ら床屋となって脱武士の手伝いをする高橋英樹には、少し悲しい気持ちになった。ましてや更生した元ヤンが武勇伝を語るように「沢山斬ったんでしょう?」なんて会話をされると辛いものがある。
作り手の人たちは、幕末の時代が加速度的に移り変わる中で振り回される武士の悲哀を、従来の映画の撮影スタイルが旧いものとして廃れゆく中で時代劇を撮り続ける自分たちに重ねたりしたのだろうか(多分してない)。心なしか、時代を経る度に殺陣が荒々しくなっていく気がする。ピークは首チョンパに、キン肉マンもかくやの真っ二つに裂かれる人体。『斬る』でもやってたけど、こっちの方がより血なまぐさい。ラストの虎之助と半次郎との一騎討ちが一番美しかったのが感動的だった。