元が長編小説なので、幕末から明治にかけての話と雑多な登場人物のの整理に精一杯で三隅監督らしい映像美学があまりない印象に。それでも時代劇特有の旨みはしっかりと感じられるし、豪華な役者たちによる見せ場をしっかりと用意して存分に芝居させるテクニックに職人三隅研次の真髄を見る思い。
数少ない三隅らしさを感じたのはチャンバラシーンで、妻の松坂慶子を殺した仇をとるため高橋英樹が敵を怒りに任せて切りまくるシーンの残酷さと迫力はさすが『子連れ狼』の監督と唸った。
後半の明治編の展開が異様に速く、色んな細かい話をはしょっていることが察知できる。
必殺シリーズのメイン監督をつとめている三隅監督だからか、キャストに必殺に出演した役者が多く登場している印象(正式には松坂慶子や西郷輝彦はこの作品以降に必殺に出演)。あと脚本家も必殺で活躍している人で、三隅監督からご指名を受けたそう。
慣れない松竹東京撮影所での仕事は大変だったらしく、イメージとまったく違う小道具や美術の仕事に「こんなものダメだ!」とキレまくっていたらしい(暑中見舞に来た京都のスタッフ談)。それでもこれだけ面白い映画に仕上げるのも凄い。