あっきー

幸せへのまわり道のあっきーのレビュー・感想・評価

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)
4.5
作品自体がユニークな作りになっていて戸惑いながらも、期待を遥かに越えて心に余韻を残す良作。振り返るほどに作品の奥深い魅力にハマっていく、なかなかにレアな作品だった。

トム・ハンクスが相変わらずなんだけど、桁違いに素晴らしい。本作にてアカデミー賞助演枠でノミネートを果たしているが、出番はしっかり多いのでご安心を。演じるミスター・ロジャースは日本では知名度が低いので、自分も本作で初めて知った。アメリカでは子ども番組のホストとして、世代や人種を問わずみんなに慕われた有名人。番組では、なぜ人は憎み合うのかというような哲学的なテーマや、怒りへの対処法などをシュガーコーティングして扱っており、大人が見ても目から鱗である。まさにアメリカの良心であるトム・ハンクスはこれ以上ない配役。

映画もミスター・ロジャースの番組風に進んでいくところが、観客として戸惑う理由ではある。でも当時のスローテンポな番組世界にどっぷり浸かることも、必要なのだろう。その上で、決して人間として完璧ではないところも浮き彫りになっていく。ミスター・ロジャースも、実は自分の感情をコントロールしているのだ。それにはやはり相当な訓練が必要なはず。今年は『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』でローラ・ダーン演じる4姉妹の母親も、同じようなことを言っていた。穏やかそうに見えて、実は短気な自分の怒りを必死にコントロールしていると。おそらく人生で成功するには、自己コントロールが必要不可欠なのだ。自分や周りへの甘えは、それを失わせる。

あらためて見返したい。
あっきー

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