回想シーンでご飯3杯いける

幸せへのまわり道の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)
3.6
妻子を捨てて蒸発した父と、その息子の確執を描く家族ドラマでありながら、アメリカで実在した子供番組の名司会者フレッド・ロジャースをトム・ハンクスが演じ、父子の関係修復に一役を買うという、何とも不思議なスタイルを持った作品。

もはや、どこまでが実話なのか良く分からないのだが、恐らくは父子のエピソードはフィクションではないかと予想する。つまり、フレッド・ロジャースという国民的な人気者をトム・ハンクスが演じるという話題性と、実在した子供向け番組「Mister Rogers' Neighborhood」の再現性がアメリカ国民に歓迎され、本国での高評価につながったのだろう。

トム・ハンクス演じるフレッド・ロジャースが、取材にやってきた雑誌記者に興味を持ち友情を築いていく様子はとてもユニークで、フレッドが活躍した20世紀後半を思わせるアナログ的質感を持った映像も相まって、心に染み入るハートフルな作品に仕上がっている。ただ、フレッド本人と、もはや実話映画専門俳優となってしまったトム・ハンクスというWネームの重みで強引に説得力を醸し出している感も否めず。実話物があまり好きではない僕は、やや引き気味の姿勢で鑑賞してしまった。

やはり日本人として気になるのはフレッド・ロジャースという人物の存在感について。日本では同じポジションの人物が思い当たらないのだが、強いて言えば、同じ時代に「ひらけ!ポンキッキ」に出ていたペギー葉山さんに近いのではないだろうか。葉山さんも礼儀や道徳を優しい口調で諭すコーナーを担当されていたし、人形劇も導入していた。僕が「さん」を付けて語ってしまうのは、フレッド・ロジャース同様、聖人のような佇まいを持っておられたからである。