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殺さない彼と死なない彼女のEDDIEのレビュー・感想・評価

殺さない彼と死なない彼女(2019年製作の映画)
4.7
世の無情さを突きつけられた傑作。高校生たちの恋愛や友情を綴ったただの青春群像劇と思うなかれ。大切な人に本心を伝える難しさ、もどかしさ、その大事さ。とにかく心が地球の裏側から震えている。生きているならば未来の話をしよう。

いやー、舐めていましたよ。これは昨年11月公開ということもあり、劇場見逃し作品なんですがね、劇場で再度ドリパス上映やってくれるっていうんで観に行きました。
周りのフォロワーさんたちの中でも評判が高くて、きっといい作品なんだろうなとは思っていたんです。ただその想像の斜め上をいかれてしまいました。
正直アラサーの自分が観て何か感じれるだろうかと後ろめたい気持ちもあったんですが、これは「生(せい)」をテーマにした作品だと捉えているので純粋に年齢は関係ないかもしれません。
敢えて線引きをするならば、「死ね」とか「殺す」とか若者ならではの軽い口癖が飛び交いますし、セリフも普段こんな言葉の使い方するだろうか?と思わせられるぐらいド標準語なセリフが飛び交うので、その辺りがクリアならば大丈夫だと思います。

まず言いたいのは主要キャラ全員が好きになる、愛着が湧くというところです。
若手俳優中心ということで、全員を把握していたわけではありませんでした。鑑賞前と観賞後の印象としては以下の通りです。

〈鑑賞前の好き〉
間宮祥太郎、恒松祐里
〈観賞後の好き〉
間宮祥太郎、恒松祐里、桜井日奈子、堀田真由、箭内夢菜、ゆうたろう

つまりはみんながみんな魅力的で人間臭いんですよ。セリフ回しは最初違和感ばかりを感じてしまい、この作品大丈夫かな?というのが第一印象だったんです。
それが作品の話が進むにつれて、各キャラクターに感情移入してくるんですね。
特に我々日本人ってのは感情をストレートに表現するのが苦手な人が多いので、こういう人いるとか共感を覚えるわけです。
ある意味共感以上に“同期”する感覚を覚えました。

作品は主役の2人小坂れい(間宮祥太郎)と鹿野なな(桜井日奈子)を中心として、地味子(恒松祐里)ときゃぴ子(堀田真由)、撫子(箭内夢菜)と八千代(ゆうたろう)の三組の日常を追いながら展開していく群像劇です。
群像劇だから、彼らがいずれどんな形かで交わるんだろうなとは思ったんですが、その交わり方が予想外。
地味子ときゃぴ子の関係性が凄く素敵で、この2人のエピソードで最初の涙を奪われたわけですが、この時はまだこの物語の結末を全然予想できてませんでした。
2人の友情・絆の深さを垣間見て、いい話だな、他の2組もこんな感じで綺麗な形でまとめていくんだろうなと思っていました…。

物語が結末に進むにつれて、劇場内もすすり泣く音が聴こえてきて、もはやこれはただ事じゃ済まない作品になってきたなと。

個人的に周りをぼかしてキャラクターに焦点を合わせる撮影手法は好きでしたが、細かい演出や映画的な部分を気にされる方はさほど評価しないかもしれません。
どちらかというと単純に感情を心から揺さぶってくるような作品が好きな方には向いていると思います。

他の地域はわかりませんが、大阪ステーションシティシネマでは3/27〜リバイバル上映が開始される模様。関西圏の方で、もしこのレビューを観て気になった方は是非とも観に行かれてください。
私は昨年鑑賞していたら、年間ベストすら揺るがす作品になっていたと思います。かなり感情を心の底から揺さぶられました。

※2020年劇場鑑賞59本目
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