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盆唄のariiiのレビュー・感想・評価

盆唄(2018年製作の映画)
2.0
Filmarks試写会にて。
長かった。とにかく長かった。眠くなった。腰が痛くなった。
1時間半くらい経ったときに退屈して時計を見た。
観るのにエネルギーが必要だった。

2011年3月11日。東日本大震災。
福島県双葉郡双葉町。帰還困難区域。

映像から伝わる熱量がすごかった。
みんな盆を大切にしていて、生まれ故郷を大切にしていて。
小さい頃から当たり前に身近にあって、昔から代々伝わっていて、みんなお祭りが好きって気持ちを持っていて。
故郷を想う人たちの繋がりの強さやお祭りが好きっていう気持ちだけで人って繋がっていられるんだなあと思った。
震災の影響で双葉でお祭りができなくてから6〜7年振りの復活。
やぐらの共演。競演っていう漢字も出てきたけれど、共演を使っているのはとても良かった。
双葉の人たちは方々に避難しており、中心メンバーや参加者を集めることも、そもそもお祭りを開催すること自体も、想像するだけで大変なことは容易にわかる。
ゼロからものをつくるために人と人が助け合い、気持ちを奮い立たせる姿には胸を打たれた。

ドキュメンタリーの中には珍しくアニメーションがあって、絵のタッチがあったかくてそれがドキュメンタリーに合っているかどうかは別として、その世界観がわたしは好きだった。
一瞬空想の世界に入ったのかと思ったけれど、歴史を感じることができたし、どこか明るい気持ちにもなれた。

あと回転式パノラマカメラを使っているのも面白かった。
回転式パノラマカメラはもともとハワイでお葬式の後に集合写真を撮るために使われていたらしい。
写真1枚撮って現像するのに4万円かかると。
最後の撮った写真、見たかったなあ。
デジタルの今ではない味があった。エモかった。

ふと冷静に、もう8年前なのか、と。ついこないだのような気もするので時の流れは思ったよりはやいな、と。
そしてまだまだ復興が進んでいないことにも少し衝撃があったし、危険区域はこれからどうなってしまうのだろうかと心配になった。
このまま人が戻れなかったら、動物も住みついてしまいそうだし、草木も人の手に負えなくなり住めなくなってしまうのではないかな、と。

人の情を撮る。
言葉にならない想いは、抱きしめるか歌うか踊るか。
それを撮りたかった。
と、放映後のトークショーで監督はおっしゃっていた。
セリフより歌にのせたほうが想いが伝わる。
それは生活の中でも感じる。

太鼓のリズムと笛の音色と歌声と。
果たして合っているのか、上手いのかどうかさえわからない。
でも、きっと誰もがどこかで聞いたことがある響きと懐かしさがあって。目を瞑っていて聞いていられる心地良さがあった。
お祭りって耳で楽しむことが8割くらいだと思う。
太鼓のリズムで夏の暑さを思い出し、笛の音色で故郷を思い出す。
きっとそれぞれにそれぞれの夏がある。

地元に帰ったときに心を許せる友達がいるっていいな、夏にお祭りがあるっていいな。
被災地が題材で明るいばかりのお話ではないけれど、時は止まらず流れ続ける。
人との繋がりを大切にして、助け合って生きていく。
負けていられないな。
そんなことを感じられる映画でした。

ただ、試写会だから観たけどお金払って映画館で観ようとはちょっと思わないかも。
もっとぎゅっとまとめられたらきっとすごく良い映画になりそうだからこそもったいないなあと。偉そうなことを言って申し訳ないけれど。
トークショーがあったから考察を深められたので加点しました。
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