このアンニュイで気障で浮世離れした登場人物達は何について語り、何を思いながら煙草を燻らせ、何に泣きながら林檎を齧り、何を願いながらくるくると回っているのか私には皆目わからなかったが、印象としては《超哲学的夢想長尺王家衛》みたいな感じで、前半は「意味わかんないけど最高に好き。。」で後半は「意味わかんなくて最強に長い。。」なうっとりとまったりの極上ブレンドだった。一度も眠らなかった自分を褒めたい。
「私の見たいもの以外映す気ないですが何か?」とでも言わんばかりの、こだわりが盛大にはみ出してる絵作りがもう毎秒ツボで、びしょ濡れの掛時計や読めないネオンの文字や身投げするコップになって、この研ぎ澄まされた美意識の海に溺れていたかった。無機物に命を与えられるのも映画監督の才能のひとつなんだと思った。あと煙草の煙って画面を冴えさせる最高の小道具だなと再認識した。言葉の代わりに吐き出され刻一刻と形を変えて漂う姿はそれだけでドラマチック。どうかこの先も映画の中だけは禁煙になりませんように。
この映画の目玉らしい後半約60分のワンシークエンスショットは、誰かの醒めない夢に迷い込んだような感覚で、ロケーションの高低差をふんだんに活かした撮影は見応えがあった。だけど前半のバシッと決まりまくった構図が好きな分、画角が動き続けるというのはやや散漫になりしかも想像の5倍くらい長くて、ラスト付近は思考が停止してた。3Dで観れたらまた違うトリップ感を味わえたのかもと思うと残念。ただキスがとっても大事に尊く撮られているように感じて、こんなとんがった偏愛映画作っといて監督可愛いなぁやっぱり好きってなった。