ちょっとヨルゴス・ランティモスっぽいシュールな非日常感。不条理で理不尽な、最高のはずが最悪になるバカンス。メキシコから送り届けられてきた大胆かつ野心的・挑戦的な一作、つまり精神逆撫で系。せっかくの家族の休暇のはずが予期せぬダブルブッキング&ホテル側の塩対応のせいで共同生活＝まさしくタイムシェアの難しさをこれでもかと痛感させられる羽目になるとはトホホ。その状況を脱しようとするパパの苦悩。左右対称だったりと綺麗に切り取られる世界の中で徐々に迫り来るカメラワークのまま精神が静かに支障を来たし破綻していく様がアーティスティックかつリアリスティックに描かれている。そしてシュールレアリズムでいてパラノイア的で何処かコミカルですらある一種ブラックユーモア的観点。皆が普通は浮かれて羽を伸ばす場所を二つの立場から切り取る、あるいは浮き彫りにするというストーリーテリングもいい。すこぶる胃がキリキリしてくる不協和音、それは不思議な感覚の心理サスペンス&スリラー。毒々しく深く鋭い洞察に、実に強迫観念的で居心地悪いのに続きが気になってくるこの感じ。絶対作り手は賢い上に僕たちが理解する以上に明確な意図をここに込めている。めちゃくちゃヘンテコだったな。『ブレイキングバッド』の息子見られたのは少～し嬉しかった。
TOMATOMETER95 AUDIENCE58
