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お嬢ちゃんのtetsuのレビュー・感想・評価

お嬢ちゃん(2018年製作の映画)
3.6
オンライン開催されたイタリアのウーディネ極東映画祭にて鑑賞。

生まれ育った環境から「女性らしく」生きることに、大きな違和感を抱いている21歳・みのり。
気の弱い友人・理恵子と共に過ごしている彼女は、キツイ性格ゆえに様々な人物とぶつかりあってしまい……。

揺るぎない信念を持つがゆえに、人にキツく当たってしまう主人公。
そんな彼女の姿が、最早、スーパーヒーロー映画だった。
(後半は、また変わってくるけれど……。)

彼女の姿に自分を重ねられる人ほど、苛立ちやモヤモヤを抱える作品だとは思う。
しかし、僕自身は周囲の空気感に合わせる人間なので、むしろ憧れる部分もあり、観ていて痛快な部分が多かった。

また、主人公の親友役を・土手理恵子さんが主演を務めた作品『さよならも出来ない』を、先日見たばかりだったというタイミングも良かった。

本作のキャラクターも、そこから地続きのように感じる設定だったため、真逆とも言える二人の関係性が観ていて、本当に絶妙だなと感じた。

ただ、主演の萩原みのりさんを強調したポスターとは異なり、群像劇としての側面が強い作品*という部分は、かなり難物にも感じた。

*本作はワークショップを踏まえて制作されるENBUゼミナール主催「CINEMA PROJECT」(過去には今泉監督の『退屈な日々にさようならを』や上田監督の『カメラを止めるな!』もあった)の第8弾として企画されたもの。そのため、多くの参加者が登場しやすい「群像劇」という部分には、いかにもな印象も受けた。

引きの画作りでありふれた会話が続けられていく作風でもあるため、序盤は若干の退屈さを感じたものの、中盤以降は、主人公の人となりや弱さが見え始めるので、かなり惹きこまれた。

若者たちのありふれた会話から浮かびあがる独特の男女観や、人間の外見と内面について考えさせられるたわいもない日常のヒトコマ。

癖の強い作風ゆえにハマりきっていない部分がありながらも、不思議な魅力から、監督の他作も自然と観たくなる一作だった。
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