misty

キングスマン:ファースト・エージェントのmistyのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

クッソ!!してやられた!!!!な映画だった。


第1章『キングスマン』→第2章『1917 命をかけた伝令』→第3章『ミッション・インポッシブル6:フォールアウト』みたいな感じの構成でちゃんとキングスマンしてたのは前半ボスのラスプーチン戦だけでは?なので『キングスマン』という映画として観るならこれはどうなんだろう?と観終えた直後は思っていたのだけど後から色々考えてみてやっぱりこれはまごうことなきマシュー・ヴォーンのキングスマンなのだ…とつくづく感じた。

そもそもキングスマンは「こんなことは流石にやらんでしょ」という観客の無意識ボーダーラインをやすやすと飛び越えてくるからキングスマンそしてマシュー・ヴォーン監督なのであって、そう考えるならこれもまたザ・マシュー・ヴォーン作品なのだった。ラスプーチンが前半で退場するのもコンラッドが死線をくぐり抜けて英雄的な行いをしたにも関わらず半分身から出た錆で一兵卒ごときに殺されてしまうのも結局世代交代もあったもんじゃなくボス戦に挑みに行くのも「あれえ?!そうしちゃうんですか?!」の連続で、その連続こそがマシュー・ヴォーンなんだよ、そうだったよすっかり忘れてた。キングスマン過去2作観てきて「えぇ?!ハリーさん死んじゃうんですか?!」「えぇ?!マーリン死んじゃうんですか?!」をくぐり抜けておいてもうこの監督は何でも仕掛けてくるぞ気を引き締めろ…と思っても性懲りも無く「あれえ?!コンラッド死ぬんですかァ?!?!」と驚いてしまうこの!!チョロさよ!!!
このシリーズを観ると「主要キャラは死ぬはずない」という固定観念が我々の中に根深く根付いているのを実感する。そしてその観念はぜーんぜん、マシュー・ヴォーンの手にかかれば一瞬でひっくり返されるのであった。

「誰もやってなければOK」「面白ければOK」「終わればOK」なマシュー・ヴォーンなのでそもそもなんかタガが外れてる感があって、この先シリーズが続くとしたらこれ以上一体何を起こされるのか心配になってくる。そしてあのスケールの陰謀論を持ち出してくるところにもこの監督の倫理観がそろそろ心配になってくる。いいんですか?!その陰謀論、大丈夫なんですか?!と私としては言いたくなるけど今まで誰もやってなくて面白く仕上げることができたらそれでいいのかな。あれえそうなんですか?!その脚本でその俳優陣はOKだったんですか?!

結局ふざけてる。
あの陰謀論も全員がガチでふざけに行ってるし、英独露の国王役を一人三役でやらせてるのもふざけてるし、ボスにマシュー・グッドを据えてくるのもふざけてるし、そうして結成されたキングスマン初代ランスロットの座にアーロン・テイラー=ジョンソンがちゃっかり就くのも(お前は一体なんなんだよ?!?!?!)全てがふざけに行っていて、それに観客は踊らされてるのだった。初代マーリンとしてショーラが就いてその登場シーンも「こうすればちょっとテンション上がっちゃうでしょ?」というマシュー・ヴォーンの声が聞こえてくるようで、うるっせえな喜んじゃったけど何かァ?!?!まんまとあなたの手の平の上で踊らされましたけど何かァ?!?!(キレ)みたいな感じだった。そういう意味で、してやられた!!!!!な映画だったわけです。

キャストとしてはそっと推してるマシュー・グッドやダニエル・ブリュール、そして『エゴン・シーレ 死と乙女』のヴァレリー・パフナー等々個人的にツボな俳優がたくさん出ていたので満足です。しかしあのキャラのボスにグッドさんを据えるのはグッドさんの良さを生かしきれない感があってちょっと勿体無かったな。だからインパクトもアガり方ともにラスプーチンがMVPになっちまうわけだよ。

そしてそのラスプーチン戦もまた、「こんな戦闘シーンあればどうせアガるでしょ?」という、マシュー・ヴォーンの意地悪さなのだった……恐ろしい男……
misty

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