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キングスマン:ファースト・エージェントのhatraのレビュー・感想・評価

4.5
シリーズ三作目。二作目では世界観の拡張を横軸(場所)で試みていたが、どうにも作るのが苦しそうだった印象。
しかし今回は前日譚、縦軸(時間)での拡張を試みて見事ハマっていた。

オリジナルでは数々のガジェットが魅力のひとつでもあった為一抹の不安もあったが…いざ始まればなんのその。
今作は「人の繋がり」が武器として存分に発揮されていた。
また前二作とは大きくトーンを変えてきたが、キャラクターや展開でしっかりエンタメできている。

設定は第一次大戦の史実を元に「実はそこにいた立役者」を描くフィクションなのだが、これがとにかく優秀。
マシュー・ヴォーンは『X-MENファースト・ジェネレーション』(こちらはキューバ危機)でこの手法を使っているが、スパイものの『キングスマン』でこそシナジーが発揮されている。
この手法は第二次大戦や東西冷戦にも活用できそうなので見事縦軸での拡張に成功したと言える。

そしてこの映画特に素晴らしいのが本質的には反戦映画という点。
近年第一次大戦の映画が急激に増えているのでその潮流とも言えるが、今作は「親から見た戦争」になっているのが秀逸である。
戦場を俯瞰していることで現代人にも共感しやすく、より戦争が醜く映る。
ある場面、引用で語られる戦争を蔑視するスピーチがとても印象的だった。

これらの絶妙なセンスによって、二作目で描写不足を感じたドラマとテーマは今作で最大限に活きている。それでいてアクションの見せ場は増えているので純粋に完成度が高い。
「愛する人との誓いを守る為、自らの誓いを破る騎士道譚」…どんなヒーローよりもヒーローだった。
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