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破天荒ボクサーの小のレビュー・感想・評価

破天荒ボクサー(2018年製作の映画)
3.5
2001年、原一男監督主催“OSAKA「CINEMA」塾”参加の武田倫和監督の「東京ドキュメンタリー映画祭2018」準グランプリ受賞作。同映画祭の審査委員長は原一男師匠。そして上映後、師匠から弟子への15分間凝縮ダメだしトークショー。

笑ったわー、そしてためになったわー、原一男監督の愛のあるダメだし。

以下、素で観たい方はスルーで(カッコ内は原監督の発言ですが私的に意訳しており、ママではありません)。

「大阪帝拳の会長とは、あの結婚式のシーンくらいしかないの? ボクサー対JBC(日本ボクシングコミッション)ということを最初からわかっていて撮っていたの? 色々考えて、戦略を練りに練って、それをどうやって映像に収めるかじゃないの?」

「やっぱりボクシングの映画なんだから、試合のシーンがアレじゃあ。名作と言われているボクシング映画を何本も見て研究しなかったのか? 映画は映像が良くないと台無し。撮影、もっと勉強しろよ。この映画の前に上映していた『えんとこの歌』観たほうが良いぞ。あれ素晴らしいから。」

「そりゃ、評判は良いかもしれないよ。映画祭だって俺が準グランプリにしたようなもので、1位に推す人が多かった。でもやっぱり印象として弱い。それに教え子だし、どうしても厳しくみちゃう。」

ということで、原監督の講義を1時間くらい聞きたかったところだけど、武田監督はタジタジで困ったろうなあ。でもね、いわれてみれば確かにそうなんだよね。

ボクサー・山口賢一さんという撮影対象が一級品で、彼に着眼したのはさすがなんだけれど、映画が人物に頼っているいるというか、彼があまり「破天荒」に見えないというか。

やっぱり撮る前に「破天荒」と考えて、どう破天荒に見せるかを考え抜いたというよりは、撮りながら「これって破天荒じゃね?」と思って、まとめた感じなのかしらん。

とはいえ、日本のボクシング界もアレだね、ということはよくわかるし、原監督のトークを思い出しつつ振り返ると鑑賞力も鍛えられるような気がする。

原監督は「ドキュメンタリー映画を育てるのは観客で、観る人が少ない日本はそれが弱い気がする。良いドキュメンタリー映画の作り手が多くいる韓国とかで上映して、観客の反応を知った方が良い」というような話をしていたけど、原一男監督の鑑賞者向け講義があったら受けたいわー。
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