まっつ

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒のまっつのレビュー・感想・評価

2.9
物語そのものは『インディ・ジョーンズ レイダース/失われたアーク《聖櫃》』に影響を受けたという監督の言葉にもあるように、王道な冒険譚。なんだけど、ストップモーションアニメってだけでなんでこんなにワクワクが増すんでしょうか!服の質感やアクションの(良い意味での)モッサリ感に手作りらしさが見えて愛しい!あの千鳥格子柄のスーツの糸の感じ!ストップモーションアニメらしさと、CGと見紛うばかりの精密さの間を絶妙に突く絵作りには感嘆いたしました。『王道な冒険譚』を一コマ一コマ作り上げていくことのなんと大変なことか!エンディングでメイキング映像がちょろっと流れるのですが、わたしはそこで思わず「っはぁ〜〜〜〜」とため息をついてしまいました。これを観た後に本編を思い返すと、アクションシーンの(いい意味での)キレのなさ、モッサリした感じなんか涙が出てきますね。

自分勝手でクセのある主人公、ライオネル・フロスト卿のキャラクターもひと昔前の映画にゴロゴロいそうな感じ。基本的にアデリーナの言葉でしか気持ちや行動を変化させないんだけど、彼のキャラからすればそれが逆にリアルですよね。クライマックスで失意にくれるビッグフット、Mr.リンク(スーザン)へ協力を約束する手前でも彼女に叱咤されるため、一見すると「こいつまだてめぇの意思で動かないワケ!」と憤ってしまいがち。だけどあの場面、周りは氷。つまりは自らがあたり一面に映る構図なんですよね。アデリーナの言葉によってフロスト卿が自身を見つめ直したともとれるような演出になっていて、あそこは非常に示唆的なシーンだとわたしは思いました。しかし「人に寄り添わないクセに孤独を不当だと思ってる」という趣旨のアデリーナのセリフは耳が痛かった……

ストップモーションアニメだからこそのワクワクも、普遍的かつ確かな成長もある作品。今年観たアニメ作品の中では抜群に印象に残りました。本国では大コケとのことなんですが……スタジオライカよ、踏ん張ってくれ……
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