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ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒のペインのレビュー・感想・評価

4.7
かつて1980年マイケル・チミノ監督の大名(迷)作『天国の門』(※近年再評価の傾向強し、私も愛して止まぬ作品)が当時、「史上最悪の赤字を出した映画」としてギネス記録に掲載され、経営危機に追い込まれたでお馴染みユナイテッド・アーティスツ制作による本作『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』。

なんと本作も100億円の赤字を出したということで、それはやはり不謹慎ながらどうしても『天国の門』的なるものを期待してしまう自分がいたのだが…。

結論、興行的失敗とは裏腹にストップモーションアニメ映画史上初のゴールデングローブ賞長編アニメ映画賞を受賞はじめ最高レベルの評価を受けていることからもわかるように、映画としては“超一級品”、“奇跡的な1作”と言わざるを得ない。最高!恐らくスタジオライカ史上の最高傑作であると思うし、今一度しっかり過去のライカ作品と向き合いたいと思わされた。

古典中の古典『キング・コング』(1933)の頃からウィリス・オブライエンが手腕をふるっていた“ストップモーション”という原初的で、言わば最古の部類に属する映像技法を、最先端の技術を駆使し、ストップモーション・アニメの表現領域を革新してきたスタジオライカ。本作のその映像表現はもう本当にストップモーションなのか?と見紛うほどの超絶クオリティであり、目に幸せ…眼福とはこのことかとつくづく思わせられる。

“ストーリーに目新しさがなく、薄い”といった声もあり、たしかにお話自体は言わば『インディ・ジョーンズ』ないし『ロスト・シティZ』的な世界中を旅する冒険活劇で、目新しさはそこまでないかもしれかいが、最高のギャグに最高のアクションてんこ盛りで、しっかりエンタメしているので息つく暇もないほどに面白い。特にクライマックスの崖っぷちでの「落ちるか落ちないか」恐怖アクション等はバスター・キートンやハロルド・ロイドのサイレントアクション映画を観ているようなハラハラドキドキを味わった。また、古い価値観にとらわれていた気難しい主人公のおじさんが自分の居場所と相棒を見つけるというのにもグっときてしまった。

『ハングオーバー』でお馴染みザック・ガリフィアナキス演じるMr.リンクのチャーミングさも半端じゃない。いやはや、これは本当に凄い映画だ。わからない人はわからないでいい。
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