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ザ・ピーナッツバター・ファルコンのエンタのレビュー・感想・評価

4.3
障害者と見世物の関係はいかにして健常者の世界で、そして私たち自身の言葉で語っていいのだろうか(それ自身が健常者の傲慢なまなざしであることは前提にして)。スペクタクルな消費の一部として障害者は「利用された」という意見がある一方で、障害者からの語りからは生きる場(自立できる場)であることが示される。
障害者が自立するということは何か。熊谷晋一郎の言葉を借りると「依存先を増やすこと」だそうだ。依存が限られることや依存先が集中していることが障害者が障害たる所以であり、システムで固定化されていない「余白」を残しつつ、障害者と支援者がそれぞれその場の状況に応じた選択と決定ができる環境つぐりこそが障害者支援に求められる課題だと熊谷は語る。

本作は端的に「余白」を探していくロードームービーと表現できるだろう。兄への依存が集中していた弟、自立して依存先を増やしたいダウン症の彼。彼らの巡り合わせは必然であり、とても自然なプロットのように感じる。そして、彼らはロードームービーだからこそ表現できる物語の「余白」へと飛び込むのだ。彼らが今後どのように生きていくのか、物語の「余白」を本作を見た鑑賞者がそれぞれ考えることが、障害者支援の一歩につながるのかもしれない。
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