JIZE

ザ・ピーナッツバター・ファルコンのJIZEのレビュー・感想・評価

3.8
施設から脱走したブリーフ一枚のダウン症の青年と他人のものを盗んでは追われる漁師、青年を探す施設の看護師の三人が出会い旅をする一風変わったロードムービー。観る前は"イカダで航海をする青春映画"と想像していたが、実際はものすごく地に足のついた人生の有限性を謳う映画だった。云うなれば『チョコレートドーナツ(2014年)』の難病要素と『ショート・ターム(2014年)』の抑圧から解放感を、足して二で割ったような妙に居心地の良い感触。三者三様に人生の壁に阻まれ"追われる"共通項は胸に打つものがあった。またダウン症の青年の思わぬ行動力により場面が開ける感じや通じ合っていく工程は清涼感と群像感が画面いっぱいに滲み出ている。30歳を迎えたダコタ・ファニングの劣らぬ美的なビジュアルも紅一点で健在。"夢を信じるチカラ"があるからこそ人間は前へ前進できる。人間の原動力の根源へ立ち返る回帰要素も見事だった。欲を言えば映画館の暗闇で河をバックに哀感に浸りたい作品でした。
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