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ノベンバーのtorumanのレビュー・感想・評価

ノベンバー(2017年製作の映画)
3.9
白と黒、月と闇が織りなす美しい悪夢

モノクロ映像に浮かぶ狼と雪。
頭が牛の頭蓋骨、身体が農具でできた"使い魔クラット"が子牛を捕まえてヘリコプターのように運ぶ。
冒頭のシーンから、美しい映像と独特の世界観に目を奪われました。

この作品はエストニアの寒村を舞台に、繰り広げられるラブストーリーですが、人間・死者・悪魔・魔女が共存している不思議な世界の中で繰り広げられます。
疫病も女の姿や動物の姿をとっています。
(キスされると一瞬で死にます😅)

映像はこの世のものとは思えないほど美しく、1コマ1コマが写真集のようです。
絵画だとブリューゲルの版画や、夢魔の絵で有名なフュースリを彷彿させます。
また、黒と白の使い方が素晴らしく、農民や悪魔・魔女は漆黒、貴族達と死者(死者の日で戻ってきている)はハレーションを起こしたような白で描かれており、闇と光の対比構造でそれぞれの関係が描かれます。

ストーリーは民間伝承の類いが色濃くて、ドラマで引っ張っていく作品ではありません。
ただ、この作品は美しく独特な映像でラストまで引っ張るパワーがあり、観客を終始圧倒させ惹きつけます。

かなりの異色作ですが、映像は一見の価値あり。
絵画や写真集を見るのが好きな方や、不思議な世界観に惹かれる方(笑)には必見の作品です。
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