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メモリーズ・オブ・サマーのmaiのレビュー・感想・評価

メモリーズ・オブ・サマー(2016年製作の映画)
3.8
少年が成長する物語と言うには苦すぎる夏のお話でした。

母親とは良好すぎるくらいの関係を築いていて、まるで友人同士のようです。
しかし、そんな母親はいつの間にか夜にめかし込んで出かけるように…旦那が遠くに稼ぎに行ってることを良いことにってのがまずはひとつ辛いところです。
主人公は「仲の良かった母からの裏切り」「大好きな父への複雑な思い」を抱えることになったのです。母親に加担することもできないけど、父親に告げる勇気だってありません。誰かに相談したいけれど、彼にはそんな相手もいない。だって母親が友人だったから。
そんな主人公のもどかしさを表すのが「母親のファスナーをあげる」「夜に出かけるのに疎いフリをする」だと思いました。
本当は浮気に気付いてるけど、母親の嘘に騙されてあげて、なんでもないことのように振る舞う。
そして、そんな中で近所に遊びに来ていた少女と仲良くなります。
しかし、その女の子もガラの悪い男の子に夢中に…母親との思い出のこもった場所にも一緒にいったし、その子が母親に重なるような意図的すぎる演出があざといけど好きです。

そして、最後は踏切の中へ…冒頭のシーンに戻ってくる訳です。
少年にとっては色々ありすぎた夏です。
自分はほとんど加担してないけど、もしかしたら自分にも咎があるかもと思わずにはいられない溺死事件。
母親の浮気、父親にバレてしまう、近所の女の子との仲違い。
必要ではない成長を遂げる訳です。
そんな彼と母親との間を電車が通るシーンでこの映画は終わるのですが、その描写すら「母親との精神的な決別」を表してるようでした。

ノスタルジックで美しい風景ながらも、描く世界はドロドロしていてそのコントラストが好きでした。
mai

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